連日、悲惨な交通事故が多発しております。
しかし毎度の事ながら、警察の原因調査によって、ドライバーの「
わき見運転」、「
スピードの出し過ぎ」、「
ハンドル操作の誤り」などの理由で処理されてしまい、しかも総てドライバーの責任にされてしまう場合が多いのが現実です。
しかし、それでは、国道や道道、市町村道の各所に設置している
事故多発地帯の看板に矛盾があると思います。つまり「
交通システム」にも事故の原因があるのは当然です。
スピードを出し過ぎても事故を起こさないドライバーと、スピードを出さなくとも事故を起こすドライバーが存在するのは何故でしょう。
事実、
時速40km以下での事故が最も多いのをどう説明するのか。
警察は、交通事故をドライバーだけの責任として簡単に処理してはいないのか。これでは、いつまで経っても輪禍は減らないし、逆にドライバーやクルマの増加により輪禍が増え続けるのは違いないのです。
かつて、NHKの交通事故防止キャンペーンにおいても「
危険なのは、クルマではなく、運転するドライバーである」と印象づける放送をしていました。また、「
時速40kmではカーブを曲がり切れても、時速50kmでは曲がり切れない」などと「
速度のみを基準」として事故を起こす確率を判断しているから呆れてしまいます。
クルマというのは、
1人乗車と4人乗車、
車高や形状、
路面や気候など、あらゆる条件で、ドライバーの運転操作とその結果(速度や方向など)に至るクルマの特性、つまり伝達関数などのパラメータが変わってしまうのです。
たとえば速度だけではなく、クルマの重量によって、例えば、1人乗車ではカーブを曲がり切れても、4人乗車では曲がり切れない場合もあります。
北海道では、これから冬季になるとスリップ事故が多発します。
いわゆる冬型事故です。そして、いつも犠牲になるのは、老人や子供などの交通弱者なのです。道路管理者は、それが分かっているにも関わらず、何故スリップ事故対策をしないのか非常に疑問です。
たとえば事故多発地帯を融雪剤やロードヒーティングなどで整備すればスリップ事故が減少するのは当然です。
スタッドレス化による「ツルツル路面」や「アイスバーン」は、いくらタイヤの性能が良くても、タイヤの形状自体がその原因になっているため「
交通システム」の改善をしない限り絶対に解決できません。
以上のように交通事故は「
ドライバー」と「
クルマ」そして「
交通システム」の三要因が重なり合って起こるのです。そして冬期においては、夏場以上の「予
見運転」が要求されるというわけです。
若年ドライバーは、スピードの出しすぎによりハンドル操作を誤り事故を起こし、高齢ドライバーは、ノロノロ運転である、という認識が多いようですが、これは若年と高齢ドライバーの対称的な特徴ではなく、実は共通点なのです。
スピードの出し過ぎと、ノロノロ運転がなぜ共通点かと言うと、若年と高齢ドライバーの共通点として挙げた次の3点の中の[2.過渡特性や定常特性が劣る]に該当するからです。
1.予見能力が低い。
2.過渡特性や定常特性が劣る。
3.協調性が低い。
過渡特性や定常特性が悪ければ、クルマは不安定になり、危険な状態に陥るか、あるいは応答が非常に遅いために、危険回避が不能になるわけです。 |
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前者は若年ドライバーの無謀運転、
後者は高齢ドライバーのノロノロ運転に該当します。
スピードを出さない高齢ドライバーが事故を起こすのは、1、2、3全てに該当するわけですが、2について検討・吟味すれば、そのわけが分かります。つまり、
過渡特性が劣るため、危険回避のための敏速な操作が出来ずに事故を起こすのです。
たとえば、乾燥路面において40Km/hで走行しているクルマを、危険回避のために停止させる場合、普通であれば15メートル前後(夏場)で停止できます。
しかし高齢ドライバーの場合は、この距離が非常に長いのです。
高齢ドライバーは、危険を認識してブレーキ操作を行うまでの時間がかかるため
空走距離が長く、更に足腰の力が弱いため、十分なブレーキ操作ができません。そのために
制動距離が長くなります。
他車が追い越しをかけてきて、すぐ割り込まれた場合、
過渡特性が優れていれば敏速に危険回避ができる場合が多いのです。
しかし、それ以前に1.の[
予見能力が低い]ことも原因になっているのです。追い越された場合、
割り込まれるかどうか[予見]できなければ、非常に危険です。
また、高齢ドライバーの場合、60Km/hの公道を、危険な状態でもないのに20~30Km/hで走行する自体が問題なのです。
以前、右翼の街宣車が、230号線を定山渓から札幌市南区の石山あたりまで、時速5km/hの超ノロノロ運転で走行し、渋滞を招いたとし道路交通法違反で検挙されたことがありましたが、1、2の他に3に挙げた[
協調性]も重要なことなのです。
「
運転席から見えない外界の範囲を死角」といいます。
しかし「
目で見える物だけが存在するとは限りません」。
逆に、「
目では見えないからといって存在しないとも限りません」。
例えば、目で見える蜃気楼はその場には存在しません。あるいは、何らかの原因で、幻覚状態に陥ると存在しないものまで見えてしまうといいます。
ここで、
目では見えない、又は
見え難い例を挙げます。
例えば、
”薄暮”では、歩行者や対向車が見え難くなります。また、対向車のヘッドライトが歩行者を照らすと、自分のクルマからは、その歩行者の影しか見えなくなることがあります。つまり視覚というものは如何に、いい加減なものかを考えなければなりません。
次に、「
死角」を見ようとする場合にも「
予見能力」と「
的確な状況判断」が必要なのです。もちろん視覚や聴覚、臭覚、触覚も必要です。
発車寸前のクルマの前後左右の「死角」は、乗る前にクルマの周りを一巡すれば、安全かどうか大体の見当がつくものです。
もしクルマの周りで子供が遊んでいれば。一言注意をすればよいのです。
更に、クルマを安全に発車するための初期速度は、2~3Km/h(ほぼ子供の歩行速度)とします。
この状態でクルマが2~3メートル動いてから本格的に 加速します。
見通しの悪い交差点では、できる限り減速したうえ、センターライン側に寄ります。
交差点に差し掛かったときには、クラクションを軽く鳴らすのも一つの方法です。夜間走行の場合は、ヘッドライトをパッシングなどで一時的に明るくするなどで「死角」があっても安全確認の方法があるはずです。
ドライバーが適切な「
予見能力」を備えれば「
車の陰から歩行者がでてくる」、「
親子が道路を挟んで会話をしていたら子供が飛び出す」、「
犬や猫が走ってきたり、サッカーボールが転がってきたら、子供が追っかけてくる」などの予見は誰にでも簡単に出来るものです。
次に、「
協調性」とは、「
お互いに調和すること」であり、相手があるからこそ「
協調性」という言葉が成り立つのです。
安全走行やクルマの流れを乱すような「
無理な割り込みをしない」、「
暴走運転や低速運転をしない」などという
基本的なマナーが「協調性」なのです。
しかし「
安全運転していますよ」とノロノロ走っている車に限って、信号無視や標識無視、あるいはウインカーをあげないドライバーが多いものです。困りますね。
おわり