はじめに
質問事項
ビデオソフトの著作権等についての質問事項
ビデオソフトのコピー等について、主なビデオソフトメーカーの回答
レーザーディスク社(現パイオニアLDC社)の回答
日本ビクター関係会社の回答(ビデオテック社、ビクター音楽産業株式会社CIC・ビクタービデオ株式会社日本フォノグラム株式会社
東宝ビデオ社(口頭による回答)
ワーナーパイオニア社の回答
現映社の回答
東京放送(TBS)の回答
パラマウントビデオ社(パッセルビデオ社)(口頭による回答)
ヘラルドネルソン社の回答
バンダイ メディア事業部の回答
CBS・ソニーグループの回答
小学館の回答
テイチク社の回答
TDKコア社の回答
社団法人日本ビデオ協会の回答
日本ビデオ協会と同じ回答
文化庁著作権課の回答(口頭による回答)
回答を控えたメーカーとその理由
問い合わせを無視したメーカー
まとめ
はじめに
 この調査は、現行の改正著作権法が施行される前の1988年11月より約4ヶ月間かけて、ビデオソフトのコピーに関する問い合わせを主なビデオソフトメーカー42社に対して行ない、その解釈や回答をまとめて、パソコン通信ネットワーク旧PC-VANのSIG-AVSQUREに掲載されたものです。
従いまして、現在では法解釈が変っている可能性があることや、25年も前の調査であるため、回答した会社がすでに存在しないこともありますので、その点はご了解頂きたいと存じます。
1.質問事項
昭和63年11月15日
ビデオソフトメーカー各位殿
ビデオソフトのコピーに関する問い合わせ
前略
 PC−VAN(主宰者 日本電気,会員数約4万5千人)およびEYE−NET(主宰者フジミック,フジサンケイグループ,会員数約6千人)などのパソコン通信ネットワークにおいて,どこまでが違法コピーで,コピーはどの程度まで許されるのかが疑問になっております.
 コピー問題については微妙な点が含まれるため,貴社を含めた主なビデオソフトメーカーの御見解を伺いたいとおもいます.つきましては,下記の件でご回答頂ければ幸いに思います.

[1] テレビやラジオの番組の録画は,家庭内における個人の使用に限って黙認されていますが,レーザーディスク(LD)やレンタルソフトを含めたビデオソフトのコピーは,家庭内における個人での使用の範囲でもコピーは違法ですか.もし個人がこのような違法コピーを行った場合,貴社は個人を告訴しますか.  関連ですが,LDなどのソフトのジャケットには「無断で複製,放送,上映,公開演奏,レンタルすることは法律で禁じられています」と明記されていますが,家庭内における個人の使用でもコピーは禁止されますか.

[2] 営利に使用しない場合でもコピーは違法ですか.もし違法であれば,テレビやラジオの録画や録音も,コピー行為であるため違法と言うことになりませんか.

[3] EYE−NETのAVコーナーにおいて「大学祭,学校祭などでの営利を目的としない上映やコンサートは違法ではない.」という意見がありましたが,この件について貴社の御見解をお聞かせ下さい.
[4] PC−VANのAV−SIGにおいて,ビデオソフト(テープソフト)の価格は非常に高いという意見が,かなりありましたが,LDソフトに比べて高い理由はどこにあるのでしょうか.
アメリカでのビデオソフトの価格は,たとえば「マイ・フェア・レディ」のテープ2本組が7ドルから8ドル(日本円で千円程度)であり,生テープより少し高いくらいと聞きます.このように日本との大幅な価格の差は,いったいどこにあるのでしょうか.

以上の4点について質問致します.宜しくお願い申し上げます.
これらの質問の趣旨は,「合法だから良い」とか「違法だから悪い」という事ではなく,一般の使用者一人一人が『コピーを自粛』し,気に入ったソフトは購入するよう心がけることにより,芸能関係者の有形,無形の財産を守り,ソフト産業の発展とソフトの量産化による価格の低下のためになると判断したためです.回答が得られましたら,さっそく数社のパソコン通信ネットワークに,アップロードし、貴社の意見をパソコン通信ネットワークにて反映させるよう努力します.
草々
北海道大学 文部技官 石川栄一 
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2.ビデオソフトのコピー等について、 主なビデオソフトメーカーの回答
レーザーディスク社   (パイオニアLDC社)の回答
[1] レーザーディスク等のビデオソフトおよびレンタルソフトをコピーすることは,家庭内における視聴または個人的な利用であれば,権利者の承諾を得ることなく行うことができます.

[2] 営利を直接の目的としない場合でも,使用目的が個人的な利用ではなく,あるいは間接的に営利行為に結び付くような利用を目的とするコピーは,違法行為となります.

[3] 学園祭等における営利を直接の目的としない上映といえども,上映行為が集客効果を高め,模擬店による収入等,間接的に営利行為に結び付くような場合には,違法行為となりますので,事前に権利者から承諾を受けることが必要になります.

[4] 日本とアメリカとのビデオソフトの価格の差は,権利料および品質管理,製造工程の違い,並びにおよそ10倍の格差がある市場規模の違いが価格の差となっていると思われます.

 尚,著作権法上の解釈につきましては,文化庁著作権課にお問い合わせ頂くのが最善かと思います.
 文化庁著作権課の回答は後日掲載します。
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        日本ビクター関係会社の回答
 昭和63年12月29日
ビデオテック社
ビクター音楽産業株式会社
CIC・ビクタービデオ株式会社
日本フォノグラム株式会社
  ご質問の1項より3項は,何れも著作権法に関連した内容でございますが,その法体系では,条約は法律より上位の法と考えられていますから,日本の著作権法もこのベルス条約の制約を受ける事もあります.
依って,ご質問事項に就きましては,国内の著作権法の範囲にて,以下のご回答を致します.

[1] 家庭内において,個人が映像ソフトをコピーする範囲内ならば,著作権法第三十条(私的使用のための複製)により,違法ではありません.
この条文は,「著作者の目的となっている著作物は,個人的に又は家庭内その他これに準じる限られた範囲内において使用する者が複製することができる」としており,第三者にコピーテープを貸出,或は,グループによる回覧などの行為は,個人の使用目的から逸脱しますから違法となりますと共に,領布権に抵触する恐れもあります.
 告訴に就いては,前記の著作権法第三十条(私的使用のための複製)を逸脱する,悪質な行為が判明した場合は,先ず,違法行為を止めるよう文書にて警告します.それでも無視するようであれば,刑事及び民事上の法的処置を取る事になるものと思います.
関連するご質問に就いて禁止に関する明記は,前記の個人の使用目的から逸脱を防止する目的ですので,特に敢えて記入をしていません.

[2] 営利目的でなくとも違法です.
営利目的でないコピーの主旨ですが,通常は第三者に配布,或は,貸出などの無償による行為が考慮されますので,これらの場合は何れも前記の条文より逸脱するためです.又,映像ソフト及びテレビ,ラジオよりのコピーも,個人の使用目的以外はすべて違法になります.

[3] これも違法です.即ち,このような催しは営利目的でなくても,不特定多数が対象となりますので,著作権法第三十条(私的使用のための複製)の条文より逸脱する行為になるためです.但し,使用したい映像ソフト(ビデオ,映画など)の著作権者に許諾を求める事が出来ますので,承認されたものはこの限りでありません.

[4] 生テープの価格は大差はないものと考えておりますが,相違は次の二点にあるものと存じます.
    (1)一作品当りの生産数量   (2)非常に高いライセンス料
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        東宝ビデオ(口頭による回答)
[1] 著作権法第三十条(私的利用のための複製)に明記されている限られた範囲内であれば合法である.またテレビやラジオの番組の録画や録音は『黙認』されていると解釈しているが『合法』である.
告訴については前例はないが,違法行為に対しては,たとえ個人であっても場合によっては告訴をするつもりである.たとえば,店頭にある自動複製機器によるコピーは告訴の対象となる.

[2] 質問1に関連するが,著作権法第三十条(私的利用のための複製)に明記されている限られた範囲内であれば合法である.

[3] 著作権法第三十八条の解釈が問題になっている.
端的に述べると,次の3項目全てに該当する場合は違法ではない.
  (1)料金を取らない.
  (2)出演者に報酬を払わない.
  (3)営利を目的としない.

ただし,周辺の団体などの営利に結び付く場合は,民法上の問題になると言う弁護士もいる.

[4] 日本のソフトの価格が高い理由
 (1) マーケットスケールが異なる.アメリカの場合は,日本の7倍ぐらいのマーケットがある.
 (2) 現在のビデオソフトの約95%はレンタル市場対応である.
   当社の最近の作品では,約99%がレンタル用に販売されている.
 (3)業務用として販売しているため高くて当然である.
 (4)セルの作品までも,レンタルビデオ店が無断でレンタルしている.
       ワーナーパイオニア社の回答
[1] 著作権法の第三十条(私的利用のための複製)にあるとおり,私的使用のためのコピーは違法とはなりません.ただし,個人保用の商品に限られ,レンタルしてきたものの複製は,”違法”という解釈をとっています.
個人が違法コピーを行なっても告訴しません.できないのが現状です.

[2] 前項同様,所有権が移行していないものは,コピーをすれば違法でしょう. テレビ放映については分かりません.

[3]”EYE−NET”とは?, いずれにせよ,”放映権”について,有料,無料関係なく,著作権者の許諾を得なければ違法です.

[4]
★当社では,既に逆転の傾向にあり,来年(1989年)発売の商品は,LDよりVCの方が,安価になるものが多くなります.
★米国に比べ高いのは,生産ロットによるものでしょう.
 日本でも5万巻以上程度のものであれば,かなり安くコストが上がるはずです.ただし,そのメーカーのメイン商品ですから,ある程度 ”利益”を考えた価格設定をしています。
 現映社の回答
[1] ビデオソフトの複製(コピー)は,個人が家庭内において,自分の目的のために自分の手段(すなわち機器)で行なう場合に限って容認されるものと理解しております.従って,レンタルビデオを業者にコピーさせることは不法複製と言わなければなりません.(これは,ラジオ,テレビ番組の録音,録画の場合も同様であると考えます.)
 常識的には,私どもは,個人が家庭内で行なった複製については,告訴する考えはありません.私どもが今問題にしているのは,販売またはレンタルに供する目的を持って,業者が大量に複製するいわゆる海賊版ビデオについて,著作権法に定める複製権,領布件,貸与件などが侵害されたものとして,告訴の手続きを取るものであります.
 ジャケット等に印刷された「無断複製」禁止は,原則論として明記したものであり,その他,放送,上映,公開演奏,レンタルなどは,それぞれ,その必要がある場合,著作権者に申し出て,その許諾を得ればいいわけで,ケースバイケースにより,利益が得られると考えれば,契約に基き,それ相応の支払いを受けることにより,その範囲内で認めておるのが現状であります.ただ何事も勝手に無断使用しては困るということであります.

[2] 著作権者すなわち”映画製作者”は,著作権法上さまざまな権利を独占的に有しておりますが,これが公益的理由や社会慣行により著作物の公正でと考えます.
 それが[質問1]でお尋ねの私的使用のために本人が自分で行なう複製や図書館などにおける部分的複製,学校などの教育機関で行なう授業に使用するための複製また時事事件の報道のための利用などについては,その出所を明示すること,複製物の目的以外に使用しないことを条件に認められております. 従って,一概に営利に使用しないから何でもコピーして自由に使用出来るというものではありません.

[3] CATVやCCTVの放映などは,営利行為として利用するものであるから,契約書の締結により,有償で許諾しますが,大学祭など,営利を目的としない上映などについては,状況説明を受けた上で,無償で許諾する場合もありますが,その場合でも,その作品のタイトル名と製作者名を傍に明示することを条件として行なうよう申し入れています.
 ただ,大学祭であるから,すなわち営利目的でないからと言って,製作者に無断で上映することには,意義申立てが行なわれてもいたし方ありません.あくまで製作者に申出て,その許諾を得る必要があり,無償か有償かはその使用状態によって判断されるものであると考えます.
 例えば,入場料は徴収しなくても,百貨店の屋上で放映する場合は,間接的に客寄せに利用することであり,営利目的の一部と見なすことが出来ます.また,喫茶店で放映する場合でも同様の解釈が成立すると思われます.

[4] ビデオテープが高額なのは,出荷するテープの95%以上がレンタル店に於て,レンタルに供されているという現状からすれば止むを得ないと思います.
 LDはレンタルを許諾しておらず,もっぱらエンドユーザーへ販売する目的で作られており価格は低めに設定してあります.
 日米の価格差は,ビデオソフトのマーケットの大きさの違いから派生するものと考えます.
 1000万円の製作費を2000〜3000本で償却するのと20万本〜30万本で償却するのとでは,おのずから価格に差異が生じます.
日本でも,最近セルマーケットが生れ,漸次拡大される傾向にありますが,これらの価格は,2000円平均で売られております.
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   東京放送(TBS)の回答
[1] 著作権法は,家庭内における個人の使用に限って,録画が権利者に断わりなくできる,合法的に行えることを明定しています.
(第30条)これは,テレビやラジオの番組であろうとビデオソフトであろうと同様です.ただし使用する個人が自ら録画しなければ違法であり,また自ら録画したとしても,ビデオソフト販売店,レンタル店に備えつけられたダビング機を使った場合は違法となります.
 ビデオソフトのジャケットに「無断で複製....することは法律で禁じられています」というのは,100%正しい表現ではなく,ご指摘のとおり,上記30条の要件を満たせば禁止されません.
ただし,個人使用の目的の複製が相当数行なわれるため,ビデオソフトメーカーの売上げに影響を与えている事実は否定しがたく,メーカーとしては「ただし,個人使用の目的で自ら複製する場合は法律で禁じられていません」と,そこまで正確に明記しづらい事情があることは,ご理解いただきたいと存じます.

[2] 個人または家庭内の範囲を越えて使用する場合は,権利者に断わりなくするコピーは,ビデオソフトであれテレビやラジオであれ,原則として違法となります.従って,企業内,大学祭等で使用する目的でコピーすれば違法です.
 ただ,学校その他の教育機関(予備校等営利を目的として設置されているものを除く)において,教育を担任するものが,その授業の過程における使用に供する目的とする場合に必要と認められる限度においてコピーが許される等(著作権法第35条)その他いくらかの例外があります.

[3] 営利を目的とせず,かつ聴衆または観客から料金を受けない場合は上演,演奏,口述,上映を権利者に断わりなくしても違法とはなりません. ただし,演奏家等に報酬を払わないことが条件です.(著作権法第38条)ただコピーすることは一切出来ません.市販ソフトを買うか借りるかして,それをそのままデッキにかけて上映する場合が違法でないのであり,コピーする場合は質問2でお答えした通りです.

[4] 当社では,テレビ番組の二次使用の目的でビデオカセットを製作するというのが主たる目的でありますので,LDの業界の事は良く判りません.ただLDの値段が安いのは,ビデオカセットの二次利用とかハードの面からではないかと思います.またアメリカの場合,日本に比べてビデオソフトの人口の多いことやビデオショップやレンタル店等が大規模で市場全体の差からくるものと思います.
パラマウントビデオ社   (パッセルビデオ社)の回答
(口頭による回答)
[1] コピーは、全て違法と解釈している。
しかし、現在、問題になっているのは、海賊版ソフト(内容はもちろんパッケージまでもコピーしたもの)であり、個人が視聴を行うためのコピーは黙認せざるを得ない。
[2] 営利を目的としないコピーは問題としない。
[4]
(1) どのようなソフトでも、良く売れるものと売れないものがあり、それを考慮した価格設定をしなければ採算がとれない。
(2)現在の作品は、映画だけでは償却はむずかしく、ビデオで償却するのが現実である。
    ヘラルドネルソン社の回答
[1] 家庭内での個人の使用については、規則の範囲外であると思われます。
[2] 上記の答えに準じると思います。
[3] お問い合わせの件は、映画の場合「非劇場公開権」がクリアされていることが求められるケースのように思われます。
[4] 日本の場合、人件費からダビング・コスト、流通コストから、すべてのコトがアメリカよりかなり高いことが理由の第一に挙げられます。

 弊社は現在ビデオ協会には加盟していませんが、ヘラルド・グループの一員として、あらゆる問題に関してビデオ協会の判断に準拠するつもりでおります。草々
1989年1月11日
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         バンダイ メディア事業部の回答
[1] 使用目的が個人であれば違法ではなく禁止する考えはありません。
[2] 同上

[3] 個人視聴以外の権利は持っておりません。特に契約先のウォルトディズニーの作品については、ウォルトディズニー社の許可が必要のはずです。また当社のオリジナル作品については、宣伝用の16m/m貸し出しフィルムが用意してあります。ビデオではなく、こちらを利用してもらいたいものです。
[4] テープ2本組で7〜8ドルで売られているとの情報は初耳です。国内メーカービデオテープでダビング代を入れて60分物で600円位のはずです(10万本ロット)。
 アメリカの場合、15ドルで販売する経済ロット(荒利益から投入した経費を差引いた純利益が生じさせるための最小生産ロット)は30万本と聞いております。市場規模と契約金、制作費の償却等が値段に比例し現状の価格になっているのではないでしょうか。
 [当社の場合、オリジナルアニメーション(ビデオ)の制作費60分物で4千万〜6千万円かかります。]

 日本国内には領布権なるものがあります。権利が外国にあるものと国内のものとでは処理の仕方、内容がかなり違います。国内劇場映画のビデオ化で著作権の使用料金のみで上代[参考市販価格(下代=メーカーの卸価格の意味として一般的に使用しています)]の10%以上を支払います。上代の10%とは生産原価の2割以上を占めます。プラス制作費の償却費を
加えるとかなり高い物になります。

 以上が当社の説明ですが、不足の部分があると思いますが、電話でもお問い合わせください。
 ビデオ市場はこれからと思っております。昨年当社はウォルトディズニー作品を低価格で販売いたしました。かなりの数が販売できましたがこれからは消費者が購入し何回も楽しむ時代になると考えております。
安ければ市場規模も拡がりもっとビデオが身近かなものとなってくれると思っております。
  平成元年1月12日
       CBS・ソニーグループの回答
[1] 当社が発売しておりますビデオソフトをコピーすることは、家庭内における視聴または個人的な利用(著作権法30条に定められた利用方法。以下同様)であれば、権利者の許諾を得ることなく行うことができます。

[2] 営利を直接の目的としない場合でも、個人的な利用でない場合、又は間接的に営利行為に結び付くような利用を目的とするコピーは、違法行為となります。
 例えば、大学祭・学校祭における営利を目的としない上映といえども、模擬店による収入等を高め、間接的に営利行為に結び付くような場合には、違法行為になると思料しております。

[3] 日本とアメリカとのビデオソフトの価格の差は、諸権利の処理料、代理人への手数料および品質管理、製造工程の違い、並びにおよそ10倍の格差がある市場規模の違いなどが複雑に影響し、価格の差となっていると思料しております。

 尚、著作権法上の解釈につきましては、文化庁著作権課にお問い合わせ頂くのが最善かと思います。
 1989年1月24日
                       以上
文化庁著作権課の回答は後日掲載します。 
 小学館の回答

[1] LDやレンタルのビデオソフトからの家庭内利用目的の本人による複製は、著作権法第30条の規定により適法とされています。
しかし、その複製物を他人に貸すなど、第30条規定を拡大解釈し、30条に定める目的以外に使用されますと、複製行為は、ただちに違法行為となります。
また、同一著作物を2個以上複製するとか、シリーズを全部揃えてライブラリーをつくることなどは、違法であるといわれております。
第30条のような著作権の制限条項を拡大する方向で解釈・運用するのではなく、権利の保護に重きをおくべきだということが、国際的な合意になっており、それが法解釈上の基本的な考え方になっています。
 個人を告訴するかどうかは、その複製行為及び複製物の領布の実情を調査し判断することになります。
 なお、ジャケット等に記載している文章には、著作権思想の啓発の意味がこめられているのです。複製については、法によって許容されるものもありますが念のために全体として権利侵害がないようご注意を申しあげるということが本旨です。

[2] 個人が家庭内の視聴を目的として、本人が複製することについては、[質問1]で記したとおりです。そして、たとえ、非営利目的であっても、複製のしかたや、利用のしかたによっては、違法性が生じます。これは放送の録音・録画でもまったくおなじです。

[3] 非営利の上映は、法第38条1項で許されておりますが、入場料等、何らかの費用の徴収がある時、あるいは別途何らかの収入がある時は、それぞれの権利者の許諾が必要です。
 また、個人視聴を目的として貸与を受けたレンタルビデオを使用して公の上映をすることは、非営利であっても許されません。
 権利の制限規定の解釈は、正当な判断の上に立って、運用、行使されるべきだと考えます。

[4] 市販ビデオソフトの価格は、ビデオソフト事業の継続、利用の拡大を目的として、また、製造費、権利処理の対価等を勘案した上で、最も合理的と考えられる価格を企業の自主責任において正しく設定しており、単純に諸外国と比較することも、合理的とはいえません。
 たとえば一般論として、諸種の著作物の価格、あるいは農産物の価格、ガソリンの価格など、多くのものが日本と米国との間で差異があり、単純に米国を基準にすることはできないと考えます。
 ビデオソフトとLDの価格の相違は、あくまでコストの違いによるものであります。
※ 年末年始の多忙期のため、ご返事が遅れたことをお詫びいたします。あしからずご了承ください。
 小学館 メディアミックス事業部
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  テイチク社の回答
平成元年2月14日
                   テイチク株式会社 社長室法務
 お問い合わせの件につき,下記の通りご回答申し上げます.但し[4]のお問い合わせにつきましては,回答を差し控えさせて頂きます.

[1] LDやレンタルのビデオソフトからの,家庭内における利用目的で本人による複製につきましては,著作権法第30条により違法ではありません.法は『個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内』での使用と定めています.その範囲を越えて使用されますと,複製行為が違法行為となります.

[2] 営利に使用しない場合でも,複製方法,利用方法によって違法性が生じてきます.テレビやラジオの録画や録音も同様です.

[3] 市販ビデオソフトの営利を目的としない上映につきましては,著作権法第38条1項により許されておりますが,何等かの報酬が支払われる場合は,個々の権利者の許諾が必要となります.また,個人視聴を目的として貸与を受けたレンタルビデオソフトを使用して公の上映をすることは,非営利であってもできません.テレビ番組を録画して使用する場合につきましても,権利者の許諾が必要となります. 以上
 TDKコア社の回答
[1] LDやレンタルのビデオソフトからの家庭内利用目的の本人による複製は、著作権法第30条により違法ではありません。
しかし、その複製物を他人に貸すなど、第30条にある条件を越え、30条に定める目的以外の目的のために使用されますと、複製行為が違法行為になります。また、複製数量が2個以上になるとか、シリーズを全部揃えてライブラリーをつくることなどは、違法であるといわれております。
 第30条のような著作権の制限条項を、拡大する方向で解釈・運用するのではなく、権利の保護に重さをおくべきだということが、国際的な合意になっており、且つ、法解釈上の基本的な考え方になっています。
 それ故、個人を告訴するかどうかは、その複製行為及び複製物の領布の実情によって、判断することになるものであります。 なお、ジャケット等に掲載していることは、著作権の尊厳を求めているものでありまして、複製については、法によって許容されるものもありますけれども全体として権利侵害がないようご注意を申し上げているものであります。

[2] 個人が家庭内の視聴を目的として、本人が複製することについては、上記したとおりで、非営利目的であっても、複製のしかたや、利用のしかたによっては、違法性が生じます。これは放送の録音・録画でも全く同じ事であります。

[3] 非営利の上映は、法第38条1項で許されておりますが、入場料等、何等かの費用の徴収がある時、あるいは別途何等かの収入がある時は、個々の権利者の許諾が必要となります。また、個人視聴を目的として貸与を受けたレンタルビデオを使用して公の上映をすることは、非営利であってもできません。これらの権利の制限規定は狭く解釈して頂きたいと存じます。

[4] 市販ビデオソフトの価格は、ビデオソフト事業の継続、利用の拡大を目的として、また、製造費、権利処理の対価等を勘案した上で、最も合理的と考えられる価格を企業の自主責任において設定しており、単純に諸外国と比較することも、合理的ではありません。
 また、一般論として、諸種の著作物の価格、あるいは農産物の価格、ガソリンの価格など、多くの物が日本と米国との間で差異があり、単純に米国を基準にすることはできないということを、御諒解頂きたいと存じます。
独自に回答されたメーカーは,以上16社です。
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社団法人 日本ビデオ協会の回答
平成元年3月2日
 昨年来貴殿より弊協会会員ビデオソフトメーカーに対しご紹介のありました「ビデオソフトのコピーに関する問い合わせ」に関しまして,会員数社からの要望により,これらを代表して弊協会としての見解を以下のとおり回答申し上げます.

[1] 現行の著作権法では,ビデオソフト(カセットやディスク)からの家庭内視聴目的の本人による複製は第30条により違法ではありません.換言すれば,その複製物を他人に貸すなど,第30条にある条件を越え,第30条に定める目的以外の目的のために使用されますと,複製行為は違法行為になります.
 この第30条は昭和45年の著作権法改正時に新たに規定されたもので,それまでの“器械的方法で複製することは著作権侵害”という旨の条文を改めたものです.その後全国的に複製機器が普及し広く家庭内で利用されるなど当時予想もしなかった事態が生じ,複製使用料収入に依存して創作活動をしている著作権者や著作隣接権者の利益を損なうに至りました.

 国際的な著作権保護のためのベルヌ著作権条約第9条の2によれば,自由利用も“著作権者の利益を不当に損なわないこと”が条件とされていることからも,日本の実態は条約違反状態にあると言えましょう.文化庁も,これは放置できない大変な問題として昭和52年,第30条の改正問題の検討を開始し,今日著作権審議会第10小委員会の場で何等かの対策を求めようと検討を続けているわけです.
 すなわち,第30条によれば合法でありますが,第30条自体が国際的に問題のある条文になっていることをご承知願いたいと思います.
 いずれにしても,第30条のような著作権の制限条項を,拡大する方向で解釈・運用するのでなく,権利の保護に重きをおくべきだということが,国際的な合意になっており,且つ,法解釈上の基本的な考え方になっています.それ故,個人を告訴するかどうかは,その複製行為及び複製物の上映,頒布の実情によって,判断することになるものであります.

 なお,ジャケット等に記載していることは,著作権の尊重を求めているものであります.特に問題の多い第30条の自由利用を敢えて記載することはむしろ不適当と考えます.複製については,法によって許容されるものもありますけれども,全体として権利侵害がないようご注意を申し上げているものであります.もし権利侵害があることを記載するとすれば第30条だけでなく多くの制限規定も詳しく記載しなければならなくなり,現実問題として記載スペース等の制約もあって困難と考えます.

[2] 個人が家庭内の視聴を目的として,本人が複製することについては,上記したとおりで,非営利目的であっても,複製のしかたや,利用のしかたによっては,違法性が生じます.これは放送番組内容の録音・録画でも全く同じことであります.

[3] 法第38条1項では,非営利目的の上映は許されておりますが,入場料等,何らかの費用の徴収がある時,あるいは別途何らかの収入がある時は勿論のこと,無料であっても宣伝,顧客集めなどを目的とした上映の場合も営利目的と解され,個々の権利者の許諾が必要となります.
 この条項も今日のようなビデオソフトの出回り状況を想定していなかった当時設けられた規定で,現在の実情にてらして問題がないわけではありません.これらの権利の制限規定は狭く解釈して頂きたいと存じます.

[4] 市販ビデオソフトの価格は各社の方針に基づくものであり,当協会は見解を述べる立場にないことをご了承下さい.
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次のメーカー7社も日本ビデオ協会の回答と同じとのこと
■アスミック社(口頭による回答)
 アスミック社としては、ビデオ協会の見解が正式な回答である。
■東映ビデオ社
 現在,各社を代表して,日本ビデオ協会で検討しており,近日中に協会から,ご返答させて頂く予定です.
■松竹(株)
 松竹としては,日本ビデオ協会を通して御返事申し上げます.
■ポニーキャニオン社
 近く,ビデオ協会を通じまして,ご回答致します.
■日本コロムビア社
 ビデオ協会を通じて回答する。
■ビデオアーツ・ジャパン社
 著作権などの問い合わせ、4項目に関しましては、質問事項が普遍性を有していることもあり、弊社が所属いたします社団法人ビデオ協会を通じて回答させていただきますことを御了解ください。
■東芝イーエムアイ社
 先般、お問い合わせいただきました著作権他の件に関しまして「弊社は1/15日迄に回答致します」とのお葉書をお送りしましたが、ご質問が、大変、普遍性が有りますので、(社)ビデオ協会を通じて、お応えさせていただきたく、ご連絡を申し上げます。
[以上7社]
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 大手のソフトメーカー数社から,著作権については,文化庁著作権課に問い合わせるのが最善であると言うご意見があった為,実行しました.
なお、文化庁著作権課への問い合わせの内容は,メーカーへの問い合わせの[4]の質問(ソフトの価格など)を省略しております.
文化庁著作権課への質問事項
[1] テレビやラジオの番組の録画や録音は、家庭内における個人の使用に限って黙認?されているが、レーザーディスク(LD)やレンタルソフトを含めたビデオソフトのコピーは、家庭内における個人での使用の範囲でもコピーは違法か。(著作権法第三十条の解釈について)
関連ですが、LD(レーザーディスク)等のソフトのジャケットには「無断で,複製、放送、上映、公開演奏、レンタルすることは法律で禁じられています」と明記されているが、家庭内における個人の使用でもコピーは禁止されるか。

[2] 営利に使用しない場合でもコピーは違法か。
もし違法であれば、テレビやラジオの録画や録音も、厳密には、コピー行為であるため違法と言うことにならないか。

[3] フジミック(フジ・サンケイ・グループ)が主宰している、EYE−NET(アイネット、会員約6千人)のAVコーナーにおいて「大学祭、学校祭などでの営利を目的としない上映やコンサートは違法ではない」という意見があったが、この件について著作権法上の解釈はどのようになっているか。特に著作権法第三十八条の解釈について。
    文化庁著作権課の回答
(口頭による回答)
 [1] 著作権法第三十条,「家庭内での視聴の為の複製」の範囲内であれば合法である。また、結合関係の強いサークルなどのメンバー4〜5人が視聴するための複製も許される。
 しかし、極めて親しい友人相互間においても、複製物の売買や賃貸などで利益をあげることや、著作者の許諾を得ず、営利を目的に複製を行うと、第四十九条の、目的外使用に該当し著作権法違反になる。

[2] 著作権法第三十条の範囲内であれば合法であるが、非営利であっても、複製した著作物の頒布やビデオライブラリーとしての複製は違法である。

[3] 著作権法第三十八条第一項により、非営利目的で、既に興行などで公表された著作物であれば、著作者の許諾を得ないで上映は許される。

  つまり、次の三項目全ての条件に合致していること。
 (1) 営利を目的としないこと。
 (2) 無料であること。
 (3) 無報酬であること。 ただし、実質的車代であれば問題としない。

 次に、著作物を、営利目的で使用する場合は、著作者の許諾が必要であり、間接的に利益をあげるための使用は違法である。

 著作権法第三十条および第三十八条は、厳正に解釈すべきである。
なお、現在の著作権法第三十条は複製機器の普及のため、昭和59年に改正されたものである。  以上
   平成元年2月1日
文化庁文化部 著作権課
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   回答を控えたメーカーと理由
■BMGビクター株式会社
 BMGビクター株式会社は、現在ビデオソフトを取り扱っておりませんので、今回のご照会事項に就きましては、回答を見合わせて頂たく存じます。
■朝日新聞社 東京事業開発室
 著作権法の改正等が関係業界で取りざたされているなかで,当社としては現在,正式コメントは控えさせていただいております.
■キングレコード社 映像事業本部ビデオソフト部
 個人的には担当者に回答を依頼しましたが,当社としての正式な回答は,著作権法について,現在,勉強中であるため控えたい.
■アイペック社
(抜粋)私ども(株)アイペックは基本的には製品を仕入れてそれを販売(ビデオ,レーザーディスク)している立場で,販売物の著作権についてはタッチしておりません.そのため,アンケート内容については,会社としてお応えすべきではないと考えます.
■徳間コミュニケーションズ社
 弊社(徳間コミュニケーションズ)は販売会社(卸業務)の為、すべての権利関係は、他社が有していますので回答できません。あしからず御了承ください。
■キテイフィルム社(口頭による回答)
 当社は、映画製作はしていますが、ビデオソフトについては、別会社に委託しており権利は別会社にあるため回答はできません。
■ポリドール社
 弊社の応えとしては「保留」とさせて頂きますので、ご了承下さい。
 [以上7社]
 
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   問い合わせを無視したメーカー
 昨年(1988年)の11月から4度に渡り,照会文(返信葉書入り)を差しだしましたが,以下のメーカーについては,何の返答もないため[問い合わせ無視]として処理致しました.
なお、その旨、各社に通知しております。
アテナ映像社,アポロン音楽工業社,RCAコロンビア社,宇宙企画社,AE企画社,エスピーオー社,トーラスレコード社,新東宝ビデオ社,創美企画社,大映,にっかつビデオ社,バップ社
[以上12社]
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       3.まとめ
「1989年当時の私の見解」
 昨年(1988年)の11月から約3ヵ月に渡り,主なビデオソフトメーカー42社に対し著作権などについての解釈および回答を求め,順次,その回答をPC−VAN等にアップロード(送信)してきましたが,日本ビデオ協会の回答や更に,文化庁著作権課の回答も得ることが出来ましたので,本年2月24日にて,本件の問い合わせは終了致しました. 
■ メーカーの回答に対する私の見解
 質問1および2について,ほとんどのメーカーは,家庭内での視聴のための複製であれば、合法であり問題無しとしていますが,一部のメーカーは,レンタルソフトの複製は違法と解釈していますので,正確な判断が必要と思われます.
 また,非営利であっても,複製した著作物の頒布やビデオライブラリーとしての複製は違法とのことですが,文化庁著作権課の回答にあるように「結合関係の強いサークル等のメンバー4〜5人が視聴するための複製も許される」ならば「非営利でも複製した著作物の頒布は違法」という解釈は矛盾するように思えてきます.
 結合関係が強いのは,サークルのみではなく,親兄弟,また上司や同僚などとの関係も,サークルなどより,非常に結合が強いと考えられ,著作物を複製して配布しても違法にはならないのではないかと思われます.この点の解釈には触れられて居ません.
 現在,レンタルビデオは2日間借りて,200円前後で,かなり安くなってきており,コピーするのが馬鹿らしいくらいです.(当時はまだビデオ生テープが高価だった)
 日本ビデオ協会の回答によると,文化庁では,第30条の改正を検討されているようですが,現状にそぐわないと考えます.いずれにしましても,複製は自粛すべきであると思います.

 次に質問3の回答についてですが,著作権法第三十八条第一項により、非営利目的で、既に興行などで公表された著作物であれば、著作者の許諾を得ないで上映は許されますが『間接的に営利に結び付くような上映は違法』とのことです.つまり,以下の三項目全ての条件に合致している場合は合法と解釈しています.
  (1)営利を目的としないこと。
  (2)無料であること。
  (3)無報酬であること。 ただし、実質的車代であれば問題としない。

 しかし,信頼できる筋からの情報によると,○○○協会が,上記の合法行為でも違法と決めつけ,大学などに対し脅しをかけるような事を行った経過があるとの事で,学園祭での上映に対し非常に神経を使っているようです.とにかく,営利,非営利を問わず,不特定多数を対象に上映などを行う場合は,著作者の許諾を受けることが重要です.

 最後に質問4の回答ですが,これについては,ほとんどのメーカーは、的確に回答されませんでした.質問の主旨はレーザーディスク(LD)と,ビデオテープ(ビデオソフト)との大幅な価格差の原因についてなのです.
 米国でのLDの価格は35ドル〜45ドル(日本円で約4400円〜5700円)であり,更に廉価版の25ドル(日本円で約3200円)のLDも登場するとの事[2月7日の北海道新聞より].
 それに対し,米国のビデオソフトの価格は,約7〜8ドル(日本円で約1000円)との事.
■AVCC社ビデオコム1987.1より引用
AVCC社ビデオコム1987年1月号のCOM COM CLUB.では,ビデオソフトの価格について次のように述べられています.

日本のソフトはまだ高価,
巨大なマーケットを放置している.
<前文略> 米国は地域により,かなり事情が異なりますので,これが必ずしも米国全体の状況ではありません.
 では始めましょう.米国では,まずあらゆることに自由競争の考え方が貫かれており,日本のような再販価格や中小,零細小売店を保護する法律が少ないためか,当地ミネソタでは,小売店は,ほとんど大型小売業か,チェーン店で競争は激しく,ほとんどの品物が日本より安価で売られています.

 テープの質も高く日本で出回っているダビング物は見かけません.もし,このようなことを行うとFBIから,極めて厳しい罰則が適用されるものと思われます.
 市販ビデオソフトも日本より安く,たとえばミュージカルの「マイ・フェア・レディ」(2本1組)が,税込み6ドル34セントから7ドル41セントですから,生テープより少し高いくらいです.
 ソフト面から,日米を比較した場合,日本では高価格という点で,消費者が気軽にソフトを楽しめなく,また,業界にとっては巨大なマーケットを放置しているという印象をもちます.日本でもソフトを米国並に楽しめるときが,早く来ることを期待します.

  また,バンダイ社の回答よると,米国の場合のビデオソフトの価格は「15ドル(日本円で約1900円)程度が経済ロット(30万本)」であると述べられています.何れにしても,米国のビデオソフトの価格は【米国でのLDの販売価格の半額以下】なのです.
 しかし日本の場合は,ご存じのように,多くのソフトは,ビデオソフトの方がはるかに高く,LDの2倍位の価格に設定されています.メーカーの回答は,これについては主に,

 1.非常に高い権利料
 2.品質管理,製造工程の違い
 3.約10倍の格差がある市場規模の違い


 にあるとしています. しかし,これらの回答が的を射ているのであれば,日本の場合は、LDよりもビデオソフトが高価という逆転現象は生じないはずです.
 さらに,CICビクターから3500円で発売されているソフトのように安価な製品もあり,上記3点の理由は成り立たたなくなり矛盾します.
 興行などで、既に減価償却している作品は,レンタル向けではなく一般消費者を対象に,安く大量に販売されることを多くの消費者が希望していることをメーカーは認識すべきと思います.
 また,権利料の事はよく判りませんが,あるメーカーの非公式な説明によると,定価の約35%であると聞いていますが,これが非常に高いとは思いません.
なぜなら,「著作権」と言うのは,貸与権,上映権,頒布権,複製権,放送権,上演権,展示権,翻訳権などさまざまな権利の集合なのですからそれらの権利者に対し使用料を支払うのは当然です.

 2点目として,日本のビデオソフトが高い理由に「品質管理,製造工程の違い」がある事を上げられていますが,逆に解釈すると「米国は,品質管理や製造工程に手抜きをしているのでソフトが安い」とも受け取れ説得力がありません.
 また日本のビデオソフトメーカーがこのようなことを述べることは,米国のビデオソフトメーカーに対し非常に失礼であると思います.
テープの質については,前述したAVCC社ビデオコムより抜粋

 テープの質も高く日本で出回っているダビング物は見かけません.
もし,このようなことを行うとFBIから,極めて厳しい罰則が適用されるものと思われます.


と述べられているように,問題はないと考えます.

 3点目に市場規模の違いが原因の一つに上げられていますが,これは消費者の責任ではないと考えます.
約10倍の格差がある市場規模の違い」は,米国のビデオソフトメーカーなどの努力の賜であり,日本のビデオソフトメーカーのように,レンタル店に「おんぶ」しているようでは発展は期待できません.
 日本においても市場の開拓は可能です.たとえば,あらゆる電気店,書店,レコード店,コンビニエンスストア,スーパーマーケットそして各種のイベントなどで,人が多数集まる所を対象に市場を開拓すべきです.
 日本では,大多数の家庭にVTRが普及しており,安ければ,必ず売れるはずです.(1989年当時
 一部のメーカーの回答のように「ソフトの95%〜98%がレンタル向けであるから,あるいは業務用であるから高くてあたりまえ」という認識では,ソフト産業のこれ以上の発展は有り得ないと思います.

 最後に,私の質問事項に対し、貴重な時間をさいてご回答されたビデオソフトメーカーに対しては心から感謝します.
また,ご回答にたいし多少の批判をしましたが,私はいつも「現状を批判せずして未来への発展は有り得ない」と考えております.もし,お気に触るような事がありましたら,ご無礼をお許し下さい.
おわり
北海道大学 文部技官(当時) 石川 栄一
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