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私は個人的に1989年5月から、約半年間かけて「レーザーディスクの経年変化(劣化)に対する販売元への対応調査」を行いました。
当時、各、レーザーディスクおよび映像ソフトメーカーの常務・顧問・部長・課長級から寄せられた回答と、私の見解を掲載します。
現在、 映像メディアはDVDが主流になっており、存在感が薄れたレーザーディスクですが、発売当初の状況や、また各メーカー が、どのような対応を講じていたのかを知るひとつの資料としてお役立て下さい。
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レーザーディスクの寿命について、最大手製造元であるパイオニア(株)専務取締役は、オーディオビジュアル誌において「ピックアップが非接触ですから、ディスクが『半永久的』に使える」と述べています。
また、ASCII出版「レーザーディスク テクニカルブック」[監修パイオニア(株)]の20ページにおいても、
光学式の最大の長所は、ピックアップを記録面に接触させずに信号を読み取ることができる点にあります.その結果、ピックアップやディスクが磨耗せず、『半永久的』に高品質の映像を再生することができます。
このような長所が認められ各社より生産、販売されて、現在では全世界に普及しつつあります。
というように、光学式の最大の特長は『半永久的』に使用できる点にある、と断定しています。この『半永久』の意味について国語辞典「広辞林」で調べてみると「ほとんど永久に近い年月」となっています。そこで[永久」と言う意味を調べると「時の無限に続くこと。永遠。とこしえ」と説明されています。
つまり、「レーザーディスクの寿命は永遠に近い年月」ということになります。しかし、ソフトメーカーの言によると、レーザーディスクの経年変化(劣化)に対するクレームがあるようです。
この経年変化の状態については、端的に言いますと、画面にスノーノイズ(テレビのアンテナを外したように画像がザラザラになる)が現れたり、あるいは、音が歪んだり、最悪、再生不能になることもあります。
正常なレーザーディスク |
劣化したレーザーディスク |
原因は、「ディスクの保護樹脂より浸透した空気中の水分が、アルミの反射膜を腐食」するためです。
そのため、大手ディスク製造メーカーであるパイオニア社は、水分からアルミ表面を保護するため、酸化保護膜を形成する対策をしたわけです。
時期的には、パイオニアLDC社の場合、1985年後半から製造されたディスクは、対策済みであるようです。
しかし、1985年前半以前に製造発売された未対策のディスクを回収せずに、店頭に並べさせておくのは、商法道徳上問題といわざるをえません。
特に初期(1983年頃まで)に製造発売されたディスクの経年変化率は極めて高いため、全て回収し、再プレスを行ない再発売すべきなのです。
H社によるプレスの場合は、1986年に発売された製品についても、経年変化が発生しています。ソフトメーカーX社の場合は、H社によるプレスが多いため気をつけなければなりません。
たとえば、自己防衛として発売年度が古いものや、H社のプレスによる製品を購入した場合は、テープにダビングするなどです。
その理由は、後述する各ソフトメーカーの回答にもあるように、ほとんどのメーカーは、レーザーディスクの経年変化(劣化)の対応をしておりますが、在庫が無かったり、廃盤になることも多く、経年変化(劣化)を起したものと『同じタイトルが入手できるとは限らない』のです。
劣化したレーザーディスク(拡大) |
メーカーはこの場合「同等品や代替品と交換する」と述べています。
ハード(再生機など)の場合は、同等品や代替品という意味がわかりますが、ソフトの同等品や代替品とは、どのような意味なのでしょうか。
メーカーが言うのは”金額的に同等”という意味で、”タイトルが同等ではない”ことは当然です。
また代替品で我慢してくださいというのは、魚屋で「”イカ”がないから”スルメ”にしてください」と言われるのと同じような意味なのです。
すなわち、外見が似ていても、内容が違うものしかありませんということです。そこで、ユーザーは仕方が無いから、全然違う 内容のものと交換させられることもあるでしょう。 |
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さて,パイオニアLDC社は「1985年後半からのディスクは対策済みであるため、問題は無い」と述べていますが、はたして事実でしょうか。
このことについて、パイオニアLDC社に問い合わせたところ、当初は『問題はない』と回答されていたのを、『基本的に問題はない(’89.5)』と『基本的』という3文字が加わりました。こうなると、何かあやしくなってきます。
実際には、1986年以降の製品にも欠陥が発生しているとのことです。 レーザーディスクに対策(水分からアルミ表面を保護するため、酸化保護膜を形成する対策)を施したにもかかわらず、未だに不良品が出るのはなぜでしょうか。
あるオーディオビジュアル誌では、次のように述べられています。
通常のレーザーディスクは、片面もの両面ものを問わず、接着剤により2枚貼り合わせて製品化されています。「その接着剤からのガスが、酸化アルミを侵しアルミ反射膜を腐食させている」
との事です。
レーザーディスクの対策前は、ディスク外部からの水分によりアルミを腐食し、対策後はディスク内部からのガスによりアルミを腐食するようです。
このオーディオビジュアル誌の説明は推察であり、私が知る限りでは、対策後のディスク不良の原因については、メーカーでさえもつかんでいません。
事実、パイオニアLDC社は「接着剤のガスにより、アルミを腐食したというのは初耳です(’89.10)」と述べられています。
あるいは、原因が分かっているとしても、公表が出来ない事情があるのかも知れません。
量産品であるため、多少の不良品が出ても不思議ではありませんが、X社の一部の製品のように、半数あるいは90%以上が不良となると、話が変わります。
また「接着剤からのガスによりアルミ反射膜を腐食させる」ということが事実なら、ディスクの製造工程や方法を変更しなければならない重大な欠陥です。 |
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さて本題に入ります。
レーザーディスクの経年変化は、現在は解決済みであると言われますが、私の場合、4タイトルのディスクに経年変化が起こり(元年/9月現在)交換などの処置をしていただきました。
この件を含め、主なビデオソフト販売元に対し、次の文書を返信用の葉書きを同封し差しだしました。 |
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1989年5月16日 |
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拝啓、時下益々ご清栄の事とお慶び申し上げます。
また、著作権などの問い合わせについて、ご協力を頂き有難くお礼申し上げます。
さて、レーザーディスクは、高画質および高音質で、ディスクが摩耗せず安定したクォリティが維持できる等の特長があります。
しかし、レーザーディスクのプレス元により差がありますが、初期(4年位前までにリリースされた作品)の製品の中には、スノーノイズなどの経年劣化が起こり易いものがあります。
その原因について、次に示すような、LDの製造工程および素材の違いという事がパソコン通信やLD製造メーカーの回答により判明しました。
【レーザーディスク(LD)の経年劣化の原因】
LDやCDは、ご承知のように、ピットの成形された樹脂盤にアルミの反射膜をつけてその上に保護膜層があります。
初期のLDのアルミの純度は100%に近いものが使用されていたため純度が高く、更に薄いため空気中の水分だけで、徐々にアルミが錆びてしまい、スノーノイズの原因になったということです。
すなわち、LDの保護膜層に使用されている、PMMA樹脂というのは空気中の水分を吸湿・透過する性質があるため、LDの反射膜(アルミ)が錆びてスノーノイズを発生させます。
以上がLDの経年劣化の原因ですが、現在は、LDの反射膜を酸化アルミの状態にすることで、「錆」の問題は解決したようで、この技術を反射膜のアルマイト化というそうです。この技術が確立された現在では、LDの経年劣化はないということです。
しかし、「パイオニアLDC社の説明」によりますと、どんな技術でも、それが100%完全ということは有り得ないため、「LDは購入後何年たっても、ディスクに経年劣化があれば交換してくれるシステムになっており、既に廃盤になっているソフトの場合は、希望する別タイトルに交換します」とのことです。
スノーノイズは、小さなテレビをモニターとして使用している消費者や、LDを購入したときだけ視聴し、その後はラック等に保管したままの消費者には気がつかないでいる事が多いと考えます。
つきましては、LDの経年劣化における貴社の対応、およびご見解を、同封の葉書にご記入され、6月中旬頃までにご返信頂ければ幸いに存じます。
なお、貴社のご回答は、PC-VANなどのパソコン通信ネットワークに送信させて頂きます。
消費者がレーザーディスクを安心して購入して視聴できるよう誠意ある対応を期待しております。
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パイオニアLDC株式会社 |
レーザーディスク社発売によるLDの対応 |
生産初期のものの中に、一部のものについて、ディスク素材(アクリル)にアルミを蒸着する際に(ミクロン単位の)不十分なものがありました。現在は、製造技術を確立しましたので問題ありません。したがって、経年変化もありません。
万一、初期の不十分な製造工程によって作られたディスクをお持ちの場合には、下記の対応をさせていただきます。
1 良品と交換させていただきます。
2 お買い上げいただいた販売店で交換していただくのが原則ですが、パイオニア・インフォメーションセンター、又はサービスセンターでも交換させていただきます。
3 在庫のない場合、又は発売中止になったものなどがあった場合も、パイオニア・インフォメーションセンター、サービスセンターに御相談下さい。
同等品・代替品(価格の多少の上下を含む)と交換させていただく等、誠意をもって対応させていただきます。 |
以上
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1989年5月1日 |
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パイオニアLDC社からは、ソフトメーカー各社に問い合わせ
をする前に、あらかじめ正式回答を頂き、質問事項
(レーザーディスクの経年変化問題【3】参照)に添付しました。 |
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小社発売のレーザーディスクに関しては、未だ経年劣化の苦情や知らせを受けたことがなく、特に対応しておりません。
簡単ながら、御返事させていただきます。 |
1989年5月20日着信 |
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ご指摘の通り、初期のLDには一部CF現象が発生するものがあり、一時期に、パイオニア(株)に全品検品を依頼した事もありました。
しかし、現在は製造の段階(プレス)でのレベルアップとの関係で、全んどCF現象はなくなっていると思います。
お問い合わせの件ですが、基本的にはパイオニア(株)と同様に対応させて頂きます。 |
1989年5月24日着信 |
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(株)ポニーキャニオン販売
営業開発部 ユーザーセンター |
LDの経年劣化の対応について |
当社は、LD、CDの生産工場を持たず、数社に製造をお願いしております。各生産工場の技術担当者は、「現在では殆ど経年劣化はあり得ない」と話しておりますが、使用方法、保管条件によっては劣化の可能性もありますし、又、他の大量生産品と同様に製品間のバラツキもあるかと考えております。
このような状況下で、当社としては生産時に於ける生産ロットに対して、同一現象に基づく不良品が発生したときは、良品交換など誠意をもって対応させて頂きます。 |
1989年6月10日着信 |
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日本コロムビア(株)
川崎工場レコード生産本部検査課長 |
レーザーディスクの経年劣化につき種々検討致しましたが、”パイオニアLDC社の回答内容に準ずる”事と致しました。 |
1989年6月15日着信 |
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松竹(株)ビデオ事業部 |
LDの経年劣化の当社の対応は(スノーノイズの原因によるもの) |
(1)良品と交換させて頂きます。
(2)お買い上げ頂いた販売店で交換して頂くのが原則ですが、本社でも交換させて頂きます。
(3)廃盤等で在庫のないものは、同等品、代替品と交換させて頂きますので、松竹本社ビデオ事業部とご相談下さい。
なお、当社の初期発売作品は、当時のレーザーディスク社とライセンス契約が全んどで、松竹の発売、販売作品は昭和62年よりですので技術的にもかなり改良されてからの販売です(ちなみにプレスは(株)クラレです)。
もちろん、100%完全とは言えませんので、その時には上記の対応をさせて頂きます。 |
1989年6月19日着信 |
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1989年6月26日 |
〒160 東京都新宿区若葉1-5
アポロン音楽工業株式会社
商品業務部 |
「LD(レーザーディスク)の経年変化の対応について」のご質問について回答申し上げます。
弊社では、(株)パイオニアLDC社に製造を委託しておりますので、技術的な面の見解は同社と同じです。 製造上の要因による不良と思われるディスクをお持ちの場合は、次の対応をさせていただきますので、弊社商品業務部へ直接郵送されるか、またはお電話等でご連絡下さい。
(1)ディスクをお送りいただいた上、調査させていただきます。
(2)製造上の不良の場合は、良品のディスクと交換させていただきます。
(3)ディスクの在庫がない場合または発売中止となっている場合は、同等品と交換等の相談をさせていただきます。
なお、お送りいただきます時は、不良症状の現れる箇所と内容、お買上げいただいた年月、ご使用の再生機のメーカー名と機種名を明記していただければ幸いです。
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1989年6月29日着信 |
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東京都目黒区大橋1-8-4
ポリドール株式会社
ビデオ部 |
当ビデオ部では、ソフト制作、販売のみを行い、ディスクの製造はパイオニアLDCさん、クラレさんなどのメーカーに依頼しております。
従って、純粋に技術的な原因で不良品が出た場合は各メーカーさんにご相談の上、お客様にご納得頂けるよう心がけております。
なお、実際に問題が発生した場合の為に当社営業本部に窓口を設け、誠意をもって問題解決に努力致します。 |
1989年6月30日着信 |
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平成元年7月3日 |
東京都千代田区有楽町1-2-1
東宝株式会社
事業部・ビデオ事業室 技術課長 |
LVAP(レーザービジョン・アソシエーションパシフィック協会)側から正式な返事がまだありませんが、当社としましては、メーカーとして出荷した商品に不良品があれば、商道徳上、常識的な処理をしております。
当社はソフト原版の製作と販売をやっておりまして、ディスクのプレス等、ハード部分は専門会社に委託しておりますので、ディスク製造工場での問題は専門会社に解決してもらうしか方法がありません。
ご指摘をより高品質なLD・CDの完成のために役立てられれば私たちも幸せに思います。 |
1989年7月5日着信 |
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’89.7.5 |
(株)CBS・ソニーグループ 特販部 |
「LDの経年劣化の対応」についてのお問い合わせ頂戴致し、有難うございました。時間をいただき、製造会社等とも検討して参りましたが、対処に付きまして下記のようにさせていただきます。 |
記 |
《経年劣化の原因》
LDの信号記録面は、ディスク素材(アクリル樹脂)にアルミ蒸着を施していますが、生産初期の一部ディスクにこのアルミ蒸着の不十分のものがあり、時間と共に変化しスノーノイズを発生させました。
《経年劣化のディスクへの対応》
経年劣化と思われるディスクについては次の様に対応させていただきます。
1)あきらかに製造上の原因により、経年劣化を発生しているディスクにつきましては、責任をもって良品と交換させていただきます。
2)但し、在庫のないディスクや既に発売中止等になったディスクにつきましては同等品ディスクと交換させていただくこととします。 |
1989年7月6日着信 |
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平成元年7月6日 |
ワーナー・パイオニア株式会社
映像部 |
ディスク経年変化不良に対する原因と対応について |
現在、市場に流通しているディスクの一部に、プレス当初無かったスノーノイズが時間経過とともに発生するというディスクが発見され、ご迷惑をお掛けしておりますが、その原因と対応をご提示致します。
1.経年変化の原因
LDの信号記録面は、ディスク素材(アクリル樹脂)にアルミ蒸着を施していますが、生産初期の一部のディスクにこのアルミ蒸着の不十分なものがあり、時間と共に変化を起こしスノーノイズを発生させた。しかし、現在では製造技術が確立され、経年変化を起こすことはありません。
2.経年変化ディスクの対応
経年変化と思われるディスクについては、次のように対応致します。
1)あきらかに製造上の原因により、ディスク経年変化を発生しているディスクにつきましては責任を持って良品と交換致します。
2)但し、在庫のないディスクや既に発売中止となったディスクについては、ユーザーに迷惑の掛からない方法(同等品や代替品と交換するなど)で対応します。 |
1989年7月10日着信 |
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テイチク株式会社 |
テイチク株式会社発売の
レーザービジョンディスクの経年変化対応について |
■経年変化の原因
LDの信号記録面は、ディスク素材(アクリル樹脂)にアルミ蒸着を施していますが、生産初期の一部のディスクにこのアルミ蒸着の不十分なものがあり、時間と共に変化を起こしスノーノイズを発生させました。しかし、現在では製造技術が確立され、経年変化を起こすことはありません。
以上の回答をディスク製造会社より得ております。
■経年変化ディスクの対応について
経年変化と思われるディスクについては、下記の通り対応致します。
1)明らかに製造上の原因により、経年変化が発生しているディスクにつきましては、お買い上げ頂きました販売店で良品と交換していただくのが原則ですが、テイチク株式会社各地の営業所でも交換させて頂きます。
2)在庫がない場合、又は発売中止となった商品の場合は最寄りのテイチク営業所にご相談下さい。
同等品、代替品(価格の多少の上下を含む)と交換させて頂くなど、誠意をもって対応させて頂きます。 |
以上 |
1989年7月17日着信 |
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平成元年7月21日 |
株式会社徳間コミュニケーションズ
AV営業部 商品部 |
レーザーディスクの経年劣化の対応の件 |
記 |
弊社は、自社工場を所有せず、パイオニアLDC(株)、その他工場メーカーに製造を委託している関係上、製造クレーム品については、製造委託メーカーにクレームの確認することを前提とした対応となります。
■経年変化によるクレーム対応
1)良品と交換いたします。
原則としてお買上げ頂いた販売店で交換させて頂きますが品切れ等の場合は、弊社本社商品部でも交換させて頂きます。
2)在庫のない場合(発売中止も含む)は、商品部にご相談下さい。
同等品の代替等、誠意をもって対応させて頂きます。 |
以上 |
1989年7月25日着信 |
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1989年月8月22日 |
東芝EMI株式会社
品質管理部長 |
弊社はレーザーディスクを製造(成型)しておりませんので,経年変化のあった場合の対応について,製造依頼先と検討致しました結果、下記に示す通り対応させていただくことになりましたので,お知らせ致します. |
記 |
あきらかに製造上の原因により,ディスクが経年変化していると判断された場合は,良品と交換致します.
但し,在庫のないディスクや既に発売を中止したディスクについては,お客様と協議の上,迷惑の掛からない方法(同等品や代替品と交換する等)で誠意をもって対応します.
この場合の窓口は,品質管理部と致します. |
1989年8月28日着信 |
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1989年月9月12日 |
日本フォノグラム
録音・映像部 |
レーザーディスク品質保証ご質問の件 |
○ ソフトの器としてのレーザーディスク
弊社は,世界の優れたオーディオビジュアル作品を,より多くのファンの方々様に,できる限り高音画質にてお届けいたし,いつまでもいつまでも,ご鑑賞いただけますように,今日最もハード機器の充実いたしております.
CD:カセットテープ:LP等を,そして,ビジュアルは,レーザーディスク(CDV LP):ビデオパッケージ等に作品を収納し,お客様にお届けいたします器として活用いたしており,その器は,オランダ・ポリグラム・インターナショナル及び,弊社独自の基準・規定により選択いたしました指定工場にて(例.クラシックのCDは三洋電機?)それぞれ製造いたしております.
従いまして,弊社発売ソフト商品の一品一品の品質保証は,全て当社におきまして実施されております.
これらソフトの器となりますレーザーディスクやCDは,全て,パソコンなどの家電製品同様,プラスチックに於ける工業製品のひとつであり,民生機のレベルのもので互換性もたいへんよく比較的丈夫であります.
○ レーザーディスクの経年変化について
レーザーディスクの寿命といたしまして,お客様のお取り扱い方により大きく左右されますが,生活常温・常湿におきましてのご使用は,半永久的を目指しております.
しかし,レーザーディスクも他の工業製品と同じく全ての出荷品が完ぺきであるとは残念ながら思われません.
弊社では,規定により,一応1年間はその品質保証させていただきますが,それ以上の年月又は,お取り扱い上の人為的損傷などによります責めにはご容赦をお願い申し上げます.
さらに,弊社商品は,モデルチェンジに当たりますところの価格変更と再発売,ならびに廃盤も有り得ますのでご了承願います.
しかし,これらのように弊社におきまして,一方的な定義づけをいたしましたところで,お客様におかれましては,弊社商品に対しますご苦情やご質問をお持ちの方もいらっしゃいます.
万が一,当社商品に不都合が生じました折には,誠にお手数ではございますが,ご指摘の商品をご発送いただき,弊社の責任におきまして徹底調査させていただきます.
調査結果ののち,お客様のご納得いただけますご対応をさせていただく所存でございます.レーザーディスクは,ハードと共に多くのユーザー様にご信頼賜わり急成長遂げてまいりました.
今後,科学技術がさらに急進いたし,レーザーディスクを超えたソフトの器が発明され,世界的に普及し始めましたなら,ディスクでありましょうと,テープでありましょうとも,その種類は問題ではなく,積極的に採用いたし,より優れたソフトの器といたしまして基準づけ起用いたす所存でございます.
音楽・映像ソフトは,われわれレコード業者におきまして唯一の財産であります.弊社では,将来,通信回線などを利用し,クリーンな音や映像を,お客様宅までお届けできますよう,電送システムの研究中でございます.
その夢がかないました折には,ほぼ完全なソフト供給が可能となり,権利の保護対策にも期待いたしております. |
1989年9月14日着信 |
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以上,経年劣化の対応について,15社から回答がありました。
(平成元年9月27日現在) |
[回答された販売元(15社)]
パイオニアLDC,現映社,東映ビデオ,ポニーキャニオン,日本コロムビア,アポロン音楽工業,ポリドール,東宝,CBSソニーグループ,ワーナーパイオニア,テイチク,徳間コミュニケーションズ,東芝EMI,松竹,日本フォノグラム
以下のメーカーについては、何の返答もないため[回答拒否]として処理致しました。なお、その旨、各社に通知しております。
[回答拒否(6社)]
アスミック,キングレコード,創美企画,大映,にっかつビデオ,バップ |
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回答拒否の販売元6社には、照会状を4度ほど差出しておりますが、未だ何の連絡もないため、レーザーディスクの経年劣化に対する対応の姿勢がないか、あるいは一般消費者に対する対応の姿勢がないと判断せざるを得ません。また、このことは、企業倫理にも反するものと思います。
以上のように、一部のメーカーを除き、パイオニアLDC社とほぼ同様の回答内容でした。
しかし、ポニーキャニオン社のように、「使用方法、保管条件によっては、劣化が発生する可能性が有る」と述べているメーカーもあります。
これは「経年劣化の原因が一般消費者にもある」とも受け取れます。
そこで私は、レーザーディスクの大手製造元であるパイオニアLDC(株)商品技術部にスノーノイズやCF現象に見られる経年劣化が、「使用方法、保管条件」によって発生する事が有り得るのかどうか確認したところ『そのようなことは絶対に有り得ない』という回答が有りました。
この回答を受け再度、ポニーキャニオン社に対し、論理的且つ正確な見解を求めましたが、次のような一般論的な回答しか得られませんでした。
■パイオニアLDC社の見解
レーザーディスクの経年劣化の原因について『「使用方法、保管条件」によって発生することは絶対に有り得ない』
■ポニーキャニオン社の見解
使用方法、保管条件によっては劣化の可能性もある。
「LD保管条件、使用方法の留意点として、」
◎直射日光の当たる場所 ◎高温多湿の場所
ポニーキャニオン社が主張される、これら経年劣化の原因は、購入後に起る可能性があるもので、製造工程が原因による経年劣化とはなりえませんし、「直射日光の当たる場所」や「高温多湿の場所」での使用が何故、経年劣化の原因になるのかが不明です。
一般消費者が、通常、生活をしている室内で、レーザーディスクが劣化するような「直射日光の当たる場所」とか「高温多湿の場所」とは、具体的にどのような場所なのでしょうか。
もし劣化をするとしたら、経年劣化ではなく、ディスクの変形や反りのような状態でしょう。
変形や反りは、経年劣化ではありませんから、ポニーキャニオン社が指摘する一般消費者の保管条件、使用方法にも原因があるとは言えません。
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平成元年の1月のことですが、X社の北海道支社に2タイトルのディスクの状況(スノーノイズの発生)を説明し交換を申しのべたところ、「購入してすぐであれば交換に応じるが、数年も経過しているものは応じられない」という門前払いとも受け取れる返答でありました。 気が弱い消費者であれば、この時点で泣き寝入りするものと思われます。
そこで私は、パイオニアLDC社の対応を引合いに出したところ「それでは調べてみますので、レーザーディスクを販売店に届けて下さい」ということで、ようやく調査に応じました。
同時期に、東映ビデオ社発売のアニメ「1000年女王」が経年劣化を起こしていたので同日、調査に出しました。
東映ビデオ社のタイトルは、約1週間で交換して頂けましたが、X社の場合は「タイトル1」が約1ヶ月もかかり「タイトル2」は、調査に出してから約2ヶ月後「在庫のディスク全てが経年劣化を起こしており、再プレスを予定していたがマスターを紛失してしまった」という連絡でした。 |
エレクトロニクスショー(幕張メッセ)
1997年10月10日撮影 |
結局、止むを得ず、他の作品に交換していただいた訳ですが、もう少し、処理が早くならないものかと思いました。
また、パイオニアLDC社の北海道営業所の場合も、経年劣化の対応について「購入してすぐでしたら無条件で交換しますが、何年も経過したものは交換できません」という回答で、これもまた、レーザーディスクの経年劣化について知らない消費者は、交換してもらえないと思うでしょう.
そこで、パイオニアLDC社の本社に問い合わせたところ、「経年劣化については、何年経過しても交換に応じます」という回答でした。
私は、メーカーの窓口である支社や営業所にたいして、レーザーディスクの経年劣化について認識を深め、前向きの姿勢を取られるよう要望します。
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次に,レーザーディスクは,プレス元によりその信頼性に差がありますので,見分け方を示します.
LDプレス元の刻印場所 |
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ディスクのレーベルの周囲(内周)に次の刻印と薄く製品番号が刻まれている。
1G203421 ←製品により番号が変わります。
↑
2桁目にアルファベットが入る。
または
17E20230 ←製品により番号が変わります。
↑
3桁目にアルファベットが入る。
ディスクのレーベルの周囲(内周)に次の刻印と薄く製品番号が刻まれている。
(A面)B8051124 ←製品により番号が変わります。
↑
レーベルはA面を示すが再生面はB面を示す。
(B面)A8050974 ←製品により番号が変わります。
↑
レーベルはB面を示すが再生面はA面を示す。
ディスクのレーベルの周囲(内周)の刻印は、パイオニアと同じ様式であるが、外周の縁の一部に白いラインが入る。
刻印無し。
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最後に、レーザーディスクの寿命ですが、パイオニアLDC社等、ほとんどのメーカーは、半永久的と述べています。
レーザーディスクと、ビクターのVHDとの競り合いは、高画質、高音質、高信頼性に加え、パイオニアLDC社の謳い文句『非接触で半永久的』に使用できるという最大の特徴が、決定的な勝敗の分かれ目になったと思われます。 しかし、これまで述べてきましたように、レーザーディスクには、まだまだ解決しなければならない問題がありました。
『半永久的』と謳っているレーザーディスクの寿命について、はっきり言えることは、ディスクを購入した時期から経年変化が起きた時期までと考えた方が良いと思います。
例えば、1986年にLDのソフトを購入し、1988年に経年変化が発生したら、そのレーザーディスクの寿命は【2年】であったということです。これは極端な例ですが、実際に私が経験した例です。
レーザーディスクについての要望は、『半永久的』までは要求しませんが、映像用ネガフィルム(RGB分離式)程度の寿命があれば問題はないでしょう。現在の映像用ネガフィルム(RGB分離式)は300年位は画質を維持できるそうです。
これが無理であれば、百歩譲って日本人の平均寿命(75年〜85年)程度は、レーザーディスクの品質を維持できるよう改善していただきたいと思います。レーザーディスクを、あの世まで持って行けませんからね。
(1990年代)パイオニアLDC社では、レーザーディスクを月産150万枚から、一気に300万枚体制にしようとしており、これは問題点は既に解決済みという自信の現れのようにも受け取れます。
実際、現在のレーザーディスクは、過去のものと比べると信頼性が高いでしょうが、問題は経年変化が起きた場合の対応です。
すべてのメーカーにいえることですが、「在庫がないから、あるいは廃盤になったから他のタイトルで我慢してください」では、ユーザーは到底納得しないでしょう。
レーザーディスクは、最先端の技術であり更に発展するでしょう。
これは当初、圧倒的多数であったVHD陣営を相手に、光学ディスク技術で勝負をしたパイオニアLDC社の不屈の精神の賜物であり賞賛したいと思います。更に「営利」よりも「品質」を目標に発展されることを希望します。 |
1989年10月14日
石川 栄一 |
おわり |
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