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鬼退治
Last Update 2016/09/25 Access Counter
 
巨大なカネ食い虫
 消費した以上のプルトニウムを生み出すとして、エネルギーの自給自足につながる「夢の原子炉」と期待された高速増殖炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)が、風前のともしびとなっている。

 これまで1兆円以上の国費が投入されながら、トラブル続きで運転実績がほとんどない。それでも維持費として年間約200億円が計上され、毎日5000万円を浪費し続けるという巨大な〝カネ食い虫〟となってしまった。
 そうした中、国の原子力規制委員会は昨年11月、もんじゅの運営組織を現行の日本原子力研究開発機構(原子力機構)から変更するよう、管轄の文部科学省へ勧告を行った。

 何ら将来像を描けないまま、ばく大な費用だけがかかっている状態に規制委がしびれを切らした格好だが、文科省は期限とされた半年を過ぎても新たな運営組織を特定するに至っていない。
 活路の見出せないもんじゅに対する世論の目は厳しく、政府内からも「廃炉やむなし」といった声がくすぶり続けている。


「トンデモ検討会」

5月20日、文科省3階にある大型の会議室。規制委の勧告を受けて昨年12月に発足した有識者会議「もんじゅの在り方に関する検討会」の8回目となる会合が開かれていた。

 この日の検討会は、それまでの議論を踏まえた報告書をとりまとめ、最終回となる予定で、傍聴席には多くの報道陣が詰めかけていた。だが、会議に出席していた馳浩文科相が、さらにもう一度会合を開催することを提案し、検討会の座長を務める有馬朗人元文相も同意をすると、報道陣からはため息が漏れた。

 検討会の目的は、規制委が「宿題」として突き付けた新たな運営組織を議論することだった。しかし、議論は大半の時間が過去の問題整理に費やされ、具体的な運営組織について話し合われることはなかった。

 原子力機構の幹部は提出された資料を棒読みするだけで、問題の当事者であるという意識は感じられないまま。検討会の委員を務める大手新聞社の論説委員からは、規制委の勧告自体に疑問を呈する意見が出される始末で、まさに「トンデモ検討会」といった様相を呈していた。

 当然ながら、新たな運営主体など示せるはずもなく、報告書には「経営協議体の設置」「構成員の半数以上は原子力以外の分野の外部専門家とする」といった要件のみが記される方向だった。
 有馬座長は、運営組織の選定は「政治判断に任せる」と事実上放棄しており、何ら内容に新味のない報告書が厳しい批判にさられるのは目に見えていた。文科省の事務方によって、A4で16枚の報告書案はすでに作成されていたが、5月20日の会合で委員からいくつかの意見が出たことを理由に、とりまとめは次回に持ち越されたのだった。

 委員からの意見を反映させても、内容は報告書案を微修正する程度に過ぎない。なぜ、その場で調整しなかったのか。その答えは、次回の会合が設定された日時にあった。

 報告書を正式に取りまとめて最終回となる9回目の会合は、翌週の5月27日午後4時から。オバマ米大統領が現職の大統領として初めて被爆地の広島を訪れるという歴史的イベントと、ほぼ同じ時間帯だ。その大ニュースにぶつけて、もんじゅ報告書のニュースを小さくさせようとする狙いは明らかだった。

 一連の議論を傍聴していた政府関係者は、呆れた表情を浮かべながら、突き放すように「だから文科省はダメなんだよな」とつぶやいた。


政府内ですすむ「もんじゅ廃炉論」

 検討委と文科省がセコすぎる対応を続ける一方で、政府内では「もんじゅ廃炉」に向けた動きが着々と進んでいた。

 原子力政策を管轄する経済産業省では、原発の使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムやウランを再利用する「核燃料サイクル」を推し進め、その重要施設としてもんじゅを位置付けてきた。

 しかし、最近では、各自治体や国会議員などへの説明用資料から、もんじゅの記載が消えている。替わりに記されているのは「高速炉」の3文字だ。

 もんじゅは、消費分以上にプルトニウムを増やす「高速増殖炉」。この2つが最も異なる点は、「高速炉」が放射性廃棄物の減容化の研究にも使えることにある。
 もんじゅは研究段階の炉と位置付けられているため、経産省ではなく文科省が管轄している。経産省幹部は「もんじゅの将来は文科省が決めること」と静観するそぶりを見せてる。だが、別の政府関係者は「文科省にもんじゅを切り盛りする能力がないのは明らか。

 経産省は、自分たちの手中に入れば、現実味の薄い高速増殖炉ではなく、減容化にも使える高速炉に路線変更しようと、手ぐすねを引いて待っている」と明かす。

 原発を推進してきた自民党内でも、もんじゅに対する視線は厳しい。党内では、大臣経験者などのベテラン議員が集まり、内々でもんじゅの対応を協議する会合を行っている。そこでは、もんじゅの現状には大きな問題があるとの認識で一致し、廃炉も検討すべきとの意見も出されたという。

 同党の関係者は「国民の原発に対する見方は、依然として厳しい。そこに、もんじゅが〝無駄遣い〟との批判が高まれば、我々にとってもマイナスだ」と警戒感を示している。

 文科省がコントロールできない無能さを発揮する中、原子力政策を下支えしてきた自民党からも見放され、経産省が主導権を握ろうと虎視眈々と狙う。もんじゅは、じりじりと崖っぷちに追い詰められていった。


迫るタイムリミット

 だが、そうした「危機的状況」にもかかわらず、文科省や原子力機構はもんじゅの延命を図ろうと、時間稼ぎに躍起となっている。検討会が、新たな運営組織を示さないまま幕引きを図ったのも、そのためだ。規制委の田中俊一委員長が、検討会に対して「勧告に沿った議論がされているようには見えない」と苦言を呈したのも当然だろう。

 「安全に運転できる主体を求めているが、安全とは何なのかが少なくとも議論されていない」という田中委員長の言葉には、文科省に対する強い不信感がのぞいている。

 しかし、規制委の出した「宿題」は立ち消えになったわけではない。検討委の議論を受けて、文科省は規制委に新たな運営組織を示さなければならない。「半年をめど」との期限は、もうとっくに過ぎている。文科省幹部は「夏までに(規制委へ)回答する」との姿勢を崩していないが、見通しは厳しい。

 もんじゅは冷却材にナトリウムを使い、水を用いる通常の原発とは異なることから、電力業界は「知見を持ち合わせていない」(電気事業連合会)と、協力に否定的だ。メーカーも同様に難色を示しており、調整が難航することは必至だ。

 そのため、文科省内では現行の運営組織である原子力機構から関係部門を分離させて新法人をつくり、新たな運営組織とする案が浮上している。

 だが、抜本的な改革にほど遠いのは誰の目にも明らかで、「看板の掛け替えは認めない」とする規制委の怒りを買うことは明白だ。

 そうなれば、規制委が文科省の回答をはね付け再勧告を行うといった異例の事態となり、廃炉を求める気運が一気に高まることも考えられる。

 もんじゅの地元、福井県の西川一誠知事は、検討会での議論を「もんじゅを生かすか否か(を話し合う)、最後の機会」と述べている。その機会はすでに終わり、結論は安倍政権の政治判断に委ねられている。

 その答えを待つ間も、もんじゅは動かないまま、巨額の費用を使い続けている。


政府内で密かに進められる「もんじゅ廃炉論」と「新型高速炉」建設計画

現代ビジネス更新日:2016/07/05

もんじゅ廃炉で原発ムラに新たな利権が

高速増殖炉「もんじゅ」廃炉の裏で、経産省や電力会社ら原発マフィアたちが 新たな利権貪る新高速炉開発計画  LITERA 2016.09.24

日本原子力研究開発機構「もんじゅ関連情報ページ」より

 1983年の原子炉設置許可から33年、94年の初臨界から22年、その間、実働わずか250日で1兆2000億円もの莫大な予算が投じられてきた高速増殖炉「もんじゅ」が廃炉に向け動き出した。

 使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し再び燃料とすることで“夢の原子炉”“核燃料サイクルの本命”といわれた高速増殖炉「もんじゅ」。だが95年8月29 日の初発電から4カ月も経たない12月8日に冷却材のナトリウム漏れ事故が発生し運転が停止され、5年後の2010年5月には再び運転が開始されたが、その45 日後には炉内中継装置の落下事故で再び運転が停止された。その後も数々の点検漏れなどの不祥事が続き、2013年には原子力規制委から事実上の運転禁止命令が出されるなど再稼働の目処がつかない状態が続いていた。

ナトリウム漏れ事故

 この間、設備維持などで年間200億円もの公費が投入されていたことなどから9月21日、ついに政府も廃炉も含めた抜本的見直しを年内までに行うことを発表、これは事実上の「もんじゅ」廃炉決定と言っていいだろう。

 しかし間違えてはいけない。「もんじゅ」が廃炉になるからといって、核燃料サイクル構想じたいが頓挫したわけでは決してない。「もんじゅ」を廃炉にする一方で、政府は新たな高速炉開発に着手、核燃料サイクルをさらに推し進める方針を打ち出したからだ。
「政府が、高速増殖炉『もんじゅ』について廃炉を含め抜本的に見直すことを前提に、新たな高速炉開発の司令塔機能を担う『高速炉開発会議(仮称)』を設置する方針であることが21日わかった」(朝日新聞DIGITAL9月21日)

 「もんじゅ」廃炉とともに発表された新たな司令塔組織の設立。その背景のひとつには、八方塞がりとなった「もんじゅ」を管轄する文部科学省からその利権を奪う経済産業省の権益争いがあった。というのも「高速炉開発会議」は「もんじゅ」を所轄する文部科学省ではなく、経済産業省が中心となり、ほかにも電力会社や原子炉メーカーなど民間企業も参加するものだからだ。


 つまり、これは経産省を筆頭とした原発マフィアが勢ぞろいして、新たに核燃料サイクルを推進するための場であり、さらにはそのため投入される莫大な予算を“利権分配”をする場なのだ。廃炉報道のあった21日、「時事ドットコムニュース」ではこんな報道がなされている。

 「存続を求める文部科学省と、もんじゅ抜きの核燃料サイクル政策を目指す経済産業省の主張が対立。最後は政権に強い影響力を持つ経産省の意向が通る形で決着した」
「原子力規制委員会が昨年11月に(もんじゅの)運営主体の見直しを勧告したのを受け、文科省は電力会社などに参加を呼び掛ける形で新たな運営主体を模索。しかし、政府関係者によると、『経産省が邪魔をし、企業に応じないよう求めた』のが内幕という」
 そして「もんじゅ」に代わり、経済産業省が推し進めるのがフランスの高速炉計画「ASTRID(アストリッド)」プロジェクトだ。これは工業用実証のための改良型ナトリウム技術炉だが、この技術開発を日仏で進め2030年までの実用化を目指すという。しかもこの高速炉計画はすでに2年前から決まっていたものだ。

 「両首脳は、経済成長においてはイノベーションが重要であることで一致し、会談直後の署名式においては、安全性の高い新型原子炉ASTRIDを含む技術開発協力に関する取決めが著名されました」(外務省が発表した日仏首脳会談概要より)

 これは2014年5月5日に行われた安倍首相とフランス・オランド大統領の首脳会談で高速炉技術設立に交わされた協力合意だが、「ASTRID」プロジェクトはすでに2年前から安倍政権のもとで “国策”として決定していた。そして新たな「ASTRID」計画があったからこそ、失敗作の「もんじゅ」の廃炉を決定できた。

 つまりこれ以上「もんじゅ」に固執すれば莫大な予算への批判は必至だが、しかし目先を変えて「ASTRID」という新たな事業とすれば、国民からの批判もかわせるし新たな予算もつけられる。そのため文科省の「もんじゅ」から経産省の「ASTRID」に名前を変え移行した。それだけだ。

 しかもこれまで投入されてきた1兆2000億円に加え、「もんじゅ」の廃炉費用は新たに3000億円もが試算されているが、「もんじゅ」失敗の原因究明はおろか責任論さえあがっていない。

「ASTRID」計画にしても未だ基本的な設計段階で、すでに計画が遅れているだけでなく、予算も基本設計が終了予定の2019年までしかない。地震大国日本で建設するには耐震性に問題があるとの指摘もある。また当初フランス側は「ASTRID」の実験施設として「もんじゅ」を使うことを要望していたがそれもできなくなった。そもそも高速炉じたい冷却材であるナトリウムを取り出す技術が確立されていないため、世界でも実用化されてはいない。

「社会科学者の随想」より

 それでもなお、政府は“夢の原発”“第4世代の新型冷却高速炉の研究”などという美名のもと、「ASTRID」プロジェクトを進める方針だ。また核燃料サイクルの堅持だけでなく、各地の原発の再稼働、青森県・六ヶ所村の再処理工場竣工、プルサーマル推進、MOX燃料加工工場の建設、青森県むつ市の使用済み燃料中間貯蔵施設の竣工などを推し進め、そのために莫大な国費が投入されてきた。

 しかも、さっそく産経新聞が「高速増殖炉 『シンもんじゅ』を目指せ 核燃サイクルは国の生命線だ」(9月18日)と掲載すれば、読売新聞も負けじと「もんじゅ「廃炉」 核燃料サイクルを揺るがすな」(9月22日)と社説に掲載するなど、安倍政権親衛隊メディアはそれを後押しし、煽り続ける。

 実現が疑問視される高速炉だが、政府や原発ムラはそれに頓着する気配すらなく、新たな計画に莫大な金をつぎ込むだろう。福島第一原発の収束さえままならないなか、行き場のない高レベルの放射性核廃棄物の解決策は、核燃料サイクルではなく原発関連施設のすべての停止と廃炉しかないはずだ。
(伊勢崎馨)


福島第一原発事故の惨状

ますます“悪魔化”する 東電・原子力ムラの悪党たち 日刊ゲンダイ 2016年2月26日


 こんなバカな話があるものか。福島第1原発の事故当時、東京電力の社内マニュアルに「炉心溶融」(メルトダウン)を判定する基準が明記してあったのに、5年間もその存在に東電社員は誰ひとりとして気付かなかったというのだ。

 2010年4月に改訂された「原子力災害対策マニュアル」には「炉心損傷割合が5%を超えていれば炉心溶融と判定する」と明記されていた。東電は11年3月14日の朝には、1号機の炉心損傷割合が55%、3号機も30%と確認。マニュアルに基づけば、事故発生から3日後には「炉心溶融」と判定・公表できていたはずだ。


2011.3.12 福島第一原発 1号機爆発

福島原発1、3号機爆発映像

 ところが、東電は当時、炉心溶融の可能性を十分に認識しながら、あえて「炉心損傷」という表現を使い続け、より深刻な印象を与える「溶融」という言葉を避け続けてきた。「炉心溶融」を公表したのは、事故から実に2カ月後の11年5月のこと。公表が遅れた理由を今の今まで「判断の根拠がなかった」と説明してきたのだが、その「判断の根拠」は社内マニュアルにバッチリ記載されていたわけだ。

 マニュアルの判定基準について東電は、柏崎刈羽原発を抱え、原発事故の検証を続ける新潟県の技術委員会の求めで、今月に当時の経緯を調べ直すまで「気付かなかった」と説明したが、5年近くも放置されたことには違和感を覚える。


■再稼働のため国民にまた1つウソをつく


「端的に言って『東電はまた、ウソをついているな』という印象です。判定基準に5年も気付かないなんて、絶対にあり得ません」と、元経産官僚の古賀茂明氏はこう言った。

「官僚だった私から見ても東電の職員は官僚以上に官僚的です。事故当時のマニュアルは13年12月に全面改訂され、炉心溶融の記載は消えましたが、彼らは“白地に絵を描く”ことはしません。のちの説明のため、以前のマニュアルを詳しく確認し、記載の変更理由をしっかり整理する。新旧対照表の作成もルーティンワークのはずです。もちろん、事故当時だって炉心溶融の判定基準に気付いていたと思いますよ。今になって判定基準の存在を明かしたのは、恐らく東電が早期再稼働を目指す柏崎刈羽6、7号機の敷地内に活断層がないことが確定し、安全審査の先が見えてきたからです」


2011.3.12 福島第一原発 3号機爆発

 新潟県の泉田知事は「2カ月もメルトダウンが分からなかったとしたら、原発を運転する資格はない」と、東電を厳しく追及。再稼働を議論する前提として原発事故の検証と総括を東電に求めてきた。

「東電にとって悲願である柏崎刈羽原発の再稼働に向け、いつかは泉田知事に『炉心溶融』の判定基準の存在を説明するしかありませんでしたが、“今まで隠蔽してきました”とは口が裂けても言えない。だから、“うっかりミス”でごまかすことに決めたのでしょう」(古賀茂明氏=前出)

 要するに原発を再び動かすために、東電はまた国民を欺いているということだ。改めて、この企業の隠蔽、ウソつき体質にはヘドが出る。


原発利権温存に消えた6兆円もの国民のカネ

 こんなペテン体質の身勝手組織は、やはり延命させてはいけなかった。原発事故直後なら、東電は確実に潰せたはずだ。前出の古賀茂明氏も事故当時はまだ経産省に所属し、東電の破綻処理を熱心に訴えていた。
 それでも東電を潰せなかった要因は、経産省の責任逃れだ。そのデタラメなプロセスを国民には改めて知ってほしい。

 事故直後に問題化したのは、原子力損害賠償法に基づく免責規定の適用の可否だ。同法には「異常に巨大な天災地変」によって生じた損害は、電力会社は免責になるという例外規定がある。東電は当初、福島原発の津波被害は「巨大な天災」にあたると主張。免責を強く訴えていた。

 これに焦ったのが経産省だ。東電が免責されれば、世論の批判は当時の保安院など経産省に向かう。それを恐れて経産省は、当時の細野哲弘資源エネルギー庁長官が東電の勝俣恒久会長のもとに日参、「免責を主張しなければ経産省が必ず東電を守る」と密約を交わしたとされる。

爆発により破壊された福島第一原発

 すると、3月末には3つのメガバンクが東電に2兆円を無担保、無保証、最優遇金利で融資することを決めた。未曾有の大事故を起こし、東電株が暴落する最中の異例の巨額融資にも経産省の暗躍が囁かれた。当時の松永和夫事務次官が、全国銀行協会会長で三井住友銀行の奥正之頭取に「絶対に潰さないから融資してくれ」との密約を持ちかけたといわれている。

 そして前出の細野氏が中心となり、東電の損害賠償支援スキームを作成した。債権者のメガバンクや株主を免責し、国と電力会社などの出資で設立した原子力損害賠償支援機構が、必要に応じて東電に資金を注入。東電の経営破綻を回避し、その延命を事実上、国民の電気料金や税金で支える仕組みだ。
 これまで支援機構から東電には計49回、累計5兆8204億円もの交付金が流れている。東電本体や融資先のメガバンクを救うため、とてつもない額の国民のカネが今なお使われているのだ。


■事故の責任回避で天下りを謳歌する経産官僚


 結局、東電破綻処理を訴えた古賀氏は追われるように経産省を去ったが、破綻回避のスキームをつくった細野氏は悠々自適。現在はみずほ銀行の顧問に収まっている。当時のみずほコーポレート銀行は3・11以前、東電に5818億円を長期で貸し付けていた。持ち株比率第8位の大株主でもある。東電が破綻すれば巨額の債券や株を失っていただけに、細野氏は“大恩人”。もろ手を挙げて迎え入れたのだろう。前出の古賀茂明氏は古巣をこう批判した。

「顧問だから仕事はない。快適な部屋があって最高級の黒塗りの車がついて、昼も夜も接待費は青天井という生活でしょう。他にも原発事故以降に金融機関や保険会社に天下った幹部官僚は多い。賠償支援機構という新たな天下り組織を立ち上げ、事実上の国有化で経産省の“子会社”のようになった東電には経産官僚が現役出向で『執行役』として天下っています。経産省は未曾有の事故の責任を誰も取っていないのに、原発利権は事故以前に逆戻りどころか、拡大させているのです。福島復興に協力する国民の善意を悪用し、東電と銀行を助け、利権をむさぼる構図です」


おびただしい放射性廃棄物の山


■原発がある限り事故は必ず起きる


 こうした原子力ムラの横暴を後押ししているのが、安倍政権だ。昨年7月には「原発ゼロ」を目指した民主党政権の方針を大転換。国民が頼みもしないのに、原発を「重要なベースロード電源」と勝手に位置付け、総発電量に占める割合を20~22%とすることを決めた。原発輸出を国是に掲げる手前、国内で稼働させないわけにはいくまいという発想なのだろう。

 情けないのは本来、独立性の強い第三者機関だったはずの原子力規制委員会まで強欲な政官財癒着の構造にのみ込まれてしまったことだ。24日も運転開始から40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機が新規制基準に「適合する」とお墨付きを与えた。

 原発事故後の法改正で、原発の運転期間は「原則40年」と定められたが、早くも骨抜き。「例外的な場合に限られる」(当時の野田首相)とした最大20年の延長がアッサリ認められれば、実質「60年廃炉」となる恐れがある。規制委はそんな重要な議論をわずか15分で終了。老朽化した原子炉や建屋の安全性を確かめず「適合」と認めた。完全に原子力ムラの追認機関に成り果てている。


原発のPRと推進を呼び掛けた看板

「規制委のスタッフの大半は旧保安院から横滑りし、原子力ムラの“安全神話”が温存されているきらいはありましたが、まさか、ここまでとは……。田中俊一委員長も“ムラ人”が選んだ人材ですから、ムラの論理を覆せない。結局、『60年運転』を求める原子力ムラの論理は、安全性より採算性の優先です。火力発電の燃料費を浮かせるため、古くても出力の高い原発を動かし、電力会社の利益を押し上げたいだけ。原発輸出の国是と電力会社の短期的な利益のため、安全面を度外視にして『60年運転』という国土を使った壮大な実験を行う。まさに悪魔の論理です」(原発問題に詳しいジャーナリストの横田一氏)

 未曾有の事故から、たった5年で原子力ムラの住人が息を吹き返し、原発無法地帯と化しつつあるニッポン。この先、再び放射能被害に見舞われるまで、国民は原子力ムラの暴走を黙認するつもりなのか。

 京大原子炉実験所(大阪府熊取町)で研究を続け、原発に反対してきた「熊取6人衆」。昨年退官した小出裕章氏に続き、最後のひとりとなった今中哲二助教が定年を迎えた。今月10日の市民向けの最後の講義で、今中氏は力強く断言した。
「原発は、安全か、危険かという問題ではない。原発は危険だ。原発がある限り、事故は起きる」
 まともな理屈が通じない国は滅びるしかない。


【出典】ますます“悪魔化”する 東電・原子力ムラの悪党たち
    日刊ゲンダイ 2016年2月26日

 
原子力村 癒着の相関図
原子力村関連多額寄付
九人の学者の回答 
原子力村の住民一覧
原子力村
 
原子力村の住民一覧
 「原発マネー」1億2647万円が流れ込んだ9人の学者の回答一覧
【※SAPIO2012年4月4日号】より  全文
「奨学寄付金」「受託研究」「共同研究」などの名目で(電力会社、ゼネコン関連などから)カネが流れた研究者たちは、その事実についてどう答えるのか? 以下は、その回答である。

●前川宏一(東京大学大学院工学系研究科教授)=奨学寄附金1519万円「規則に基づいて適正に受け入れ、会計規定に基づき適正な執行を行なっている」

●堀井秀之(東京大学大学院工学系研究科教授)=受託研究1000万円、共同研究150万円「規則に基づいて適正に受け入れ、会計規定に基づき適正な執行を行なっている」

●田中和広(山口大学大学院理工学研究科教授)=奨学寄附金200万円「奨学寄附金は火山の研究のためのもので、(提供元は)九電の子会社だが、原発という意識はなかった。原子力土木委員会には、最初に1回出ただけで具体的には活動していない」

●谷和夫(横浜国立大学理工学部教授)=奨学寄附金530万円、共同研究(不明)「共同研究は原発に関係あるものとないものと両方ある。津波評価部会は、個別のサイトの評価結果は示していないし、自分は原子力産業から資金提供を受けていない」

●丸山久一(長岡技術科学大学工学部教授)=奨学寄附金100万円「寄附金は、実験・調査に関わる諸経費(機器の購入、材料の購入、旅費、文献購入費等)、研究補助をしてくれる学生への謝金等に使われる。専門はコンクリート工学なので、その観点から委員会の議論に加わっている。2002年2月の『原子力発電所の津波評価技術』には一切関わっていない。研究者、技術者として、自分で築いてきた内容、感覚に背いてまで発言することは、これまでなかったし、今後もないと思う」
●山崎晴雄(首都大学東京都市環境学部教授)=奨学寄附金330万円、受託研究1297万4843円「取材はお断わりする」

●大西有三(京都大学副学長、元工学部教授)=共同研究3150万円、受託研究1212万4350円(締め切りまでに回答なし)

●米山望(京都大学防災研究所准教授)=奨学寄附金540万円、共同研究1225万7500円、受託研究63万円「原子力土木委員会の委員への就任は2011年6月であり、奨学寄附金等はすべて水力発電に関するもの」

●宮川豊章(京都大学大学院工学研究科教授)=奨学寄附金700万円、共同研究630万円「奨学寄附金は実験費用等に使った。共同研究、受託研究は全て原発とは関係のない研究。津波が専門ではないし、学会の委員会で発言がお金の出し手に対して甘くなるようなことはない。そちらの定義する原子力産業には、大きな違和感がある。大きな組織の関係ない他部署から、受託研究や奨学寄附金をいただいている。津波想定を議論したのは私が委員になる前だが、当時の工学の最先端の成果であったと考えている。技術のレベルが未熟だったかもしれないという忸怩たる思いはあるが、責任問題とは違う次元の話だと考える」
※SAPIO2012年4月4日号より
 
 
原子力関連多額寄付-新聞記事より 
<関電、大学に2.9億円寄付 過去10年間で>
 関西電力:過去10年で計24件、2億9千万円の大学への寄付を明らかにしたが、政治家のパーティー券購入の実績など全体の3分の1にあたる項目では、一部または全体の開示を拒否した。
朝日新聞 http://bit.ly/HHHXDt 
<福井県原子力委員に1490万円 電力側 5人に寄付>
 福井県原子力安全専門委員会の委員12人のうち、4人が2006~10年度に関西電力の関連団体から計790万円、1人が電力会社と原発メーカーから計700万円の寄付を受けていた。
朝日新聞 
<福井県原子力委4人に寄付 関電関連団体、大飯でも助言>
 「県原子力安全専門委員会」のメンバー12人のうち4人の研究者が関西電力の関連団体「関西原子力懇談会」から奨学寄付金として2006~10年度に計790万円を受け取っていた。
47ニュース http://bit.ly/L6TGRC 
<原発地元に匿名寄付500億円 大半は電力業界>
 福井県:150億円は同県内に原発をもつ関西電力など電力事業者からと特定できた。電源三法交付金が国を通して計3245億円交付されているが他にも巨額の金が見えない形で地元に入っていた。
朝日新聞 
<原子力業界が安全委24人に寄付 計8500万円>
 班目委員長を含む3割近くの24人が2010年度までの5年間に、原子力関連の企業・業界団体から計約8500万円の寄付を受けていた。
朝日新聞
<原発自治体に寄付1600億円超>
 この寄付金は、発電事業に必要な費用として電気料金に組み入れられてきましたが、電気料金制度について議論してきた経済産業省の有識者会議は「これまでのように費用として認めるべきではない」と指摘。
NHKニュース http://bit.ly/L1PTRs
<原子力委3人に業界から寄付 5年間で1800万円>
 内閣府原子力委員会に設けられている会議の専門委員23人のうち、原子力が専門の大学教授3人全員が、2010年度までの5年間に原発関連の企業・団体から計1839万円の寄付を受けていた。
朝日新聞 
<寄付受けた教授主導:「核燃輸送容器」検査基準を企業に配慮>
 原発を巡っては、学会や業界団体が定めた内容が国の基準に採用される例も多いが、「原子力ムラ」内部で自分たちに有利な基準を作り上げていく構図が浮かんだ。
毎日新聞 http://bit.ly/L6Vkmv
<原子力機構へ多額寄付 電力業界から2億5千万円>
 機構は、原子力安全委員会内の「安全専門審査会」で審査に当たる委員計62人のうち10人を出しており、「寄付が審査を形骸化させているのではないか」との批判も出ている。
北海道新聞 http://bit.ly/LC3j7z
<教育委員3人、茨城知事に献金 計780万円>
 茨城県の橋本昌知事の資金管理団体「昌峯会」が2008~10年、知事に任命権のある県教育委員本人や教育委員が社長を務める企業から、寄付と政治資金パーティー券の購入で計780万円を得ていた。
朝日新聞 
 
初秋の札幌の夜景(夜9時頃)
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主催 元北海道大学 文部科学技官 石川栄一



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